ブーティー・ギャング・ストリッパーズ<最終話>
<最終話>
「柊ちゃん、窓閉めた?」
「閉めた」
「お風呂場も?」
「あ、そっち忘れてた。ちょっと待ってて」
「あー、僕もう時間ない!」
「いいよ、先行ってろよ」
出かける準備を万端に整えた柊太郎とてまりは、家の前で慌ただしいやりとりをしていた。
「ごめんね、電車あるから。肝心の家の鍵かけるの忘れないでね! 柾さんによろしく」
ドアの前からてまりだけが駆け出していく。
世間では昨日から三連休だった。月曜が祝日なので、日・祝が定休日のT/C Show & Loungeも休みとなる。ダンサーは普段は休日も自主練をする者が多いが、今回は連休ということで和泉から練習をしないよう通達されていた。たまにはダンスのことを忘れて羽を伸ばせというわけだ。
前々から話は聞いていたので、旅行の予約をとったメンバーも多かったようだ。てまりも例に漏れず、由井と一泊で温泉に行くらしい。由井は家族には出張に行くと話したという。
柊太郎は特に何をして過ごすという予定は入れなかった。柾もそうだ。
二人は二日間、柾の部屋であえて目的はつくらずにひたすらのんびりと過ごすことにした。
柊太郎と柾が結ばれてからもうすぐ三ヶ月になる。柊太郎はてまりには話したが、他の連中には何も伝えていない。柾は和泉にだけは報告したようだ。メンバー間でそういう関係になったら必ず和泉に話を上げるという決まりがあるらしい。それでもミシェルなど勘の鋭いメンバーは薄々気づいているようだった。
これまでゆっくりできる時間がほとんどなかったので、柊太郎と柾は今回の休みはあえてどこにも行かないことにした。予定を立てるとどうしても気が急いてしまうからと柾は言った。柊太郎も特に出かけるのが好きなわけではないし、異存はなかった。
もうとっくに記憶してしまったマンションの玄関の暗証番号を押し、合鍵で部屋に入ると柾はまだ眠っていた。
「柾さん、休みだからっていつまでも寝てると体がなまりますよ」
カーテンを開けて昼に近い午前の光を部屋いっぱいに入れ、柾を揺り起こす。
「うるせぇなぁ……女房かよ」
「女房みたいなもんです」
柾は腕を伸ばすと、ベッドの脇にかがみこんでいた柊太郎の首筋を抱え、引き寄せた。唇が唇に捕らえられる。柊太郎は侵入してきた舌に舌を絡めて、応える。
「勃った。責任取れ」
長いキスの後、柾は唇を離すと下半身を指した。
「それはただの朝勃ちじゃ……」
「何でもいいんだよ」
ぐいと腕を引かれ、ベッドに引き込まれる。ジャケットを剥がされ、シャツを脱がされ、パンツを下ろされ、あっという間に丸裸にされる。
「せっかくだから、二日で何発できるか試してみようか」
柊太郎にのしかかった柾はニヤリと笑う。だがその笑顔の奥に不安と悲しみがあることを、柊太郎はもう知っている。
柾の膝のことを考えると切なくなる。その日が来たら、自分たちの関係はもしかしたら何か変わってしまうかもしれない。
その分、今の快楽に身を委ねてしまいたい自分もいる。
柊太郎が壊れてしまうぐらいに、柾自身をぶつけてきてほしい。自分も柾に向かっていく。どんな未来がやって来ても、後悔したくないから。
「いいですよ」
柊太郎は力を入れて柾を抱き返した。
ブーティー・ギャング・ストリッパーズ<完>
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