泡のように消えていく… 第一章〜Chii〜<第13話>
<第13話>
沙和さんのやり方を見学したら、今度はもちろん、朝倉さんを練習台にわたしが動く。
朝倉さんの体に触れるのも口づけるのも最初は戸惑ったけれど、ちゃんとやれ、という威圧感が無言のうちに肌から伝わってきて、ローションまみれになりながら必死に体を動かした。
とはいえ、いくら初心者のわたしが頑張ったところで、当然沙和さんには遠く及ばない。
動き方はロボットみたいにぎこちないし、筋肉がなさ過ぎですぐに自分の体を支える腕が辛くなってくる。何よりわたしには沙和さんみたいにふっくら柔らかい胸が、ない。
「胸がない子はお腹のお肉を使えっていうけれど、知依ちゃん、痩せてるからそれもないのよね。そのぶん、ゆっくり動かして」
「はい……」
「知依、大丈夫だ。まだまだ若いんだから成長する。実際、ここで働き始めてから胸が大きくなったっていう子もいるし。仕事が刺激になるらしいな」
冗談みたいな朝倉さんのフォローだけど、声は真剣だった。
研修の後はお店の車に乗ってソープ嬢ご用達の婦人科へ。
これもまったく初めての経験で、パンツを脱いで拷問器具みたいな台の上で股を開くという内診のことを知っていたから、緊張と恐怖で気が遠くなりそうだった。けれども、ピルをもらうだけだったので問診のみで済んだ。
「お疲れ様です」
面接の時と今朝、店の車に拾ってもらった駅前広場で降ろしてもらう。
車から出た途端つい、ふうっと大きなため息が漏れた。
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