泡のように消えていく… 第一章〜Chii〜<第17話>
<第17回>
年齢より幼く見られるのには慣れている。
ほんと、こんなにもセクシーからかけ離れ入る20才も珍しい。そのくせよくソープで働く気になったものだ。我ながら、似合わな過ぎることをしている。
「竜希さんこそ、仕事は?」
「俺、今日は夜勤明け。今、2人で病院行って来てさ」
「そうだったんですね。順調ですか?」
「順調順調。そうだ由実、かずちゃんにお腹、触らせてやってよ」
「え、いいんですか」
まぁるくせり出した由実さんのワンピースのお腹は、昼過ぎの金色の日差しを浴びて神秘的で神々しくさえあって、簡単に触れちゃいけないものの気がした。それでも由実さんは快くいいよ、と言ってくれるので、わたしはおそるおそるお腹に手を伸ばす。
自分のお腹よりもずっと暖かくて、奥から小さな命の存在がどくどく主張していた。
力強い血液の流れを手のひらに感じる。喉の奥が熱くなるような感激に顔を上げて由実さんを見ると、由実さんは誇らしげに頷く。
それで、気づいてしまった。
わたしはこの人には勝てない。いくら思いを積み上げてきた期間が長いからって、関係ない。
完全な、敗北。
「おめでとうございます」
何を言ったらいいのかわからずにとりあえずそう言うと、由実さんはありがとうと微笑んだ。
あんまり穏やかな笑顔に、すべて見透かされてる気がした。
わたしが竜希さんを子どもの頃からずっと思っていたことも、竜希さんが結婚するって知って苦しんでることも。
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