泡のように消えていく… 第一章〜Chii〜<第20話>
<第20話>
「かずちゃん今、2年生?」
「2年ですね。来年就活です」
彼氏とかの話題から逸れてちょっとホッとした。離乳食がどうこうという話をしているお母さん2人組とすれ違う。
「就活かぁ。かずちゃんももうそんな歳なんだなー」
「そうですね。でもまだまだ先のことって感じで……。それじゃあよくないとは思うんだけど……」
「何かなりたいもの、ないの?」
「特には」
竜希さんのお嫁さん、って口にしたらこの人はどんな顔をするだろうか。
びっくりしてくれる? それとも困った顔? 案外、冗談はよしなよーってまた背中を叩かれるだけかもしれない。
わたしが竜希さんを長年思い続けてるっていうのは、竜希さんからしたら冗談みたいなことだろうから。
「スチュワーデスになりたいって夢はどうなったの?」
「いつの話をしてるんですか。とっくに諦めましたよ、背が伸びないし」
なんだか、彼氏のこととか学校のこととか就活のこととか。久しぶりに会った親戚のおじさんとしゃべってるみたいだ。
たしかに、毎日本当の兄妹のようにじゃれ合ってたのは竜希さんが小学校の頃ぐらいまでで、大人に近づくにつれて2人の間には、男の子と女の子の、4才上と4才下に相応の、近すぎず遠すぎずな距離ができていった。
それでもついこないだまで、こんな感じじゃなかったはずなのに。
「まぁとにかく、ちゃんと就活しろよー。真面目なかずちゃんには余計なお世話だろうけど」
「はい。竜希さんはこれ以上、おじさんにならないようにしてくださいね」
「おじさん!? おじさんつった!? 勘弁してくれよ、俺まだ24だぜ、かずちゃんと大して変わんないよ!?」
大して変わるんだ、結婚する人としない人では、愛する人がそばにいてくれる人といない人では。
もーかずちゃんてば、とまた背中を叩かれた。背中じゃなくて体の内側のもっと奥まったところがひりひりして、痛いです、と言った。ちょっと声が震えた。
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