泡のように消えていく… 第一章〜Chii〜<第24話>
<第24話>
アルバムは数ページを残して、高校の卒業証書を持ったわたしと、今より2才だけ若い竜希さんのツーショットで終わっていた。
あの日は、卒業式から帰ってきたらたまたま家の前で竜希さんに鉢合わせて。フィルムが余ってるからついでだって、お母さんが撮ってくれたんだっけ。竜希さんが隣にいる緊張で引きつったわたしの顔はひどくブサイクだけど、このアルバムの中で一番のお気に入りショットだ。
この頃竜希さんは既に看護師をしていたはず。ということはもしかしたら、あの時にはもう由実さんと付き合っていた……?
そう考えたら制服姿で不器用に笑っているわたしが急に馬鹿に見えてきて、むなしさや切なさとは違う、怒りに近い激しい感情が胸の真ん中でかあっと燃え上がった。
絶対に振り向いてくれない竜希さんを思っているわたしは、ただのイタい女の子だ。
未だに竜希さんを思いきれないわたしが大嫌い。
いつまでもこんなもの、大事に持ってるからいけないんだ
洋服を買うたびに手に入る紙製のショッピング袋は、特に使い道もないのについつい取っておいてしまうので、クローゼットの片隅に山を作っている。
その中から小さめのをひとつ選んでアルバムを放り込み、口をガムテープで塞いだ。それだけ持った。
玄関でクツを履いているとお母さんがどこへ行くのと声をかけてきて、コンビニ! と怒鳴って家を出る。
自転車に跨り、町はずれの公園を目指した。
いつでも人気がなくて、ブランコもすべりだいも錆ついていて、夜はお化けが出るとかホームレスが住み着いているとか、まことしやかな噂のある小さな児童公園には今日も誰もいない。ベンチの横には薄汚れた布団が畳んで置かれてたので、ホームレスがここをねぐらにしているのは本当だろう。
ほんとは焼きたかったけれど、ゴミ箱に放りこむだけで自分を満足させた。あれだけ大事にしていたアルバムが入ったピンクの花柄の紙袋は、ジュースの空き缶や煙草の吸殻にまみれると、まったく価値のないものに見えた。
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