泡のように消えていく… 第一章〜Chii〜<第29話>
<第29話>
朝倉さんから待機室での過ごし方についての説明と注意を聞いている間、背中に刺さる視線が気になってしょうがなかった。
今部屋にいるのは、3人の女の子。
その点についてはまったく考えてなかったけれど、風俗で働くような人たちと仲良くできる自信は全然ない。自分だってもう風俗嬢なのに、我ながらひどい偏見だ。
ひと通り説明が終わると朝倉さんに軽く背中を押され、待機中のソープ嬢3人と向き合わされる。
「今日から入る知依だ、よろしく」
転校生を紹介するみたいな言い方だった。でも、実際の先生ならいきなり新しい環境に放り込まれた緊張でガチガチの転校生をもっと気遣うだろうに、例によって朝倉さんらしいぶっきらぼうな口調。
「よ、よろしくお願いします」
面接の時よりも研修の時よりも顔がこわばった。お辞儀をしながらそれぞれ少しずつ離れて座っている3人の女の子たちを素早く観察する。
「よろしくでーす!」
「よろしくお願いします」
「よろしく」
一番元気のいい声を返してくれたのは、ファッション誌を読んでいた茶色いウェーブヘアの女の子。たれ目がちの優しげな目もとが人懐っこそう。
お願いしますまで言ってちょこんと頭を下げたのはたぶん26、27歳ぐらい、黒髪ロングの真面目な感じの女の人。
三角座りして耳にイヤホンを突っ込み、携帯をいじっていたショートカットの女の子は、かろうじて聞き取れるぐらいにぼそりと口を動かした。
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