泡のように消えていく… 第一章〜Chii〜<第31話>
<第31話>
面接の時に風俗自体が初めてだって言ったら、朝倉さんにも変な顔をされたけれど、初風俗でソープに来るっていうのは、こんなにも驚かれることだったんだ。
「わー、すごい、信じらんなーい! なになに? そんなにお金が必要なのぉ?」
「え、あ、まぁ……………」
「へー? なんで? 借金―?」
「こら、うららちゃん。人のこと詮索しないの」
すみれさんが慌てた声で言って、うららさんがてへへごめんなさーいと舌をペロッと出した。
今どき舌ペロッ、だなんてアイドルだってしない。何なのこの人。そして全然、悪いだなんて思ってない、きっと。
「まぁ、こういうところで働く理由は人それぞれだから……。知依ちゃんも慣れるまでは大変だろうけど、頑張ってね」
「は、はい」
すみれさんの言葉も笑顔をあらかじめ用意されていたように作り物めいていて、なんだか気味が悪かった。ぼそりと声がする。
「うざっ」
ショートカットの女の子が携帯から顔を上げてすみれさんを睨んでいた。
いや、分厚い前髪の下の丸い目は攻撃的ではあるけれどごく冷静で、睨んだって言い方は正しくないかもしれない。
すみれさんは一瞬たじろいたのか目を泳がせたけれど、すぐに仕方ないなという顔になって首をすくめ、控えめに反論する。
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