泡のように消えていく… 第一章〜Chii〜<第34話>
<第34話>
痛いことには痛かったけれど話に聞いてたほどじゃなかった。死ぬほどだとか子どもを産むのと同じだとか、そんなふうに言った経験済みの友だちは大げさな話をして、わたしをビビらせたかっただけなのかもしれない。
「いやー、びっくりしたよ。長いことこの店に通ってるけど、処女の子に当たったのは初めてだったから」
「すみません」
「いや、謝ることはないって」
個室の固くて小さなベッドの中、わたしと成田さんは並んで寝そべってた。
すでに水分を失いかけ、あちこちに茶色っぽい染みが浮いたお世辞にもきれいとは言えない成田さんの体と、胸もお尻もぺったんこで12才から時間が止まったようなわたしの体。ちょっと前のわたしだったら、お父さんぐらいの歳の人とこんなことになるなんて、気持ち悪い、絶対信じられないって思ってただろうに、汗ばんだ肌に張り付くもうひとつの弾力の衰えた肌の感触が、不思議と嫌じゃない。
初めてお客さんに披露する、泡洗いや、マットプレイは、とにかく教えられた通りにできるかどうかだけを考えていて、ただひたすら目の前のことに集中って感じで、いつのまにか緊張を忘れていた。
成田さんと2人でベッドに入り、フィニッシュを迎える頃には、すっかりわたしは落ち着いていて、長時間マットの上で仕えた体の疲れをねぎらうような、優しい愛撫を施してくれる成田さんのされるがままになった。
さすがに初めてだからまだ感じる、ということはよくわからないし、性的な興奮も全然覚えなかったけれど、自分よりもひと回り大きな体に抱きしめられて隙間なくぴったりくっついて、わたしの体を気持ちいいと繰り返し褒めてくれる成田さんに、恋とは違う種類の愛おしさが芽生えた。
人に必要とされる快感、求められる快感、それがこんなに自分を満たしてくれるものだなんて、知らなかった。
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