泡のように消えていく…第三章~Amane~<第8話>
<第8話> 「だから、また、ここで、働かせて、もらえ、ないかって……。朝倉さんに、相談、したけど。断られ、ちゃった……」 「そりゃそうよ。お店だって、何かあった時に責任持てないんだし。特にこの仕事って、風俗の中でもハードだから……」 毎日毎日、何人もの男を相手にしなきゃいけないソープ。1回あたりの接客時間も長いし、完全に体力勝負の世界。 遅漏相手の客に何十分も、アソコがひからびてすりきれるまで、バックやアクロバティックな体勢で突かれることだってある。身重の体には危険過ぎだ。 「誰か、お母さんの他に頼れる親類はいないの?」 「いない……。おじさんとか、おばさんとか、おじいちゃんとか、おばあちゃんとか。一度も、会ったこと、ない」 「きょうだいは?」 「わたし、1人っ子だし」 バカ女相手に親身に寄り添うすみれを見ていると、イライラしてきた。 エスの禁断症状は人によってさまざまで、あたしの場合は幻覚から解放されても、この異様なほどのイライラは未だに続いている。特にお人よしとかお節介とか、あたしの大嫌いなものを目にすると、イラつきの針はびーんと振れ幅限界まで上りつめてしまう。 「やめなよ、そんな女に構うの」 すみれの親身な目、知依の困った目、うららの濡れた目。6つの目がいっぺんにあたしに注がれる。 また、やってしまった。やめときゃいいのに。 物をハッキリ言い過ぎること、黙ってればいい場面で黙ってられないこと。この2つは自分の悪い癖だと昔から自覚しているが、エスをやめて始終イライラするようになってから一段とひどくなった。 悪化した性格のせいで、友だちを何人失ったか。 最初に働いたソープは1週間で辞めた、というかクビになった。けれども、その原因も先輩嬢とのケンカだった。つかみ合いになった末、相手のアバラを折ってしまったのだ。 積極的に嫌な女になったところで何の得にもならない。それは、身に染みてわかってるはずなのだけど……。
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