泡のように消えていく…第三章~Amane~<第25話>
<第25回>
「あんた、なんでそんなお人よしなのよ? マジ、バッッッッカじゃないの?」
派手に唾が飛んで、すみれが一瞬体を引いた。
でも怯んだ様子を見せたのはそれだけで、すぐに言い返してくる。
「わたしのことを嫌いなら嫌いでいい、でもうららちゃんのことは信じてあげて」
「やめてよそういうの、ウザいから。そりゃ最初のうちはちゃんと育てる気でいるだろうけど、ああいうバカはすぐ現実に打ちのめされて、またホストクラブにでも行って男を見つけて子どもそっちのけで男に貢ぎだすよ。頭も心も弱いんだから」
「それが、強くなろうとしてるの。うららちゃんはもう、彼氏にべったりのうららちゃんじゃないの。ねぇ、雨音さんも一度うららちゃんに会ってみたら?」
「いい加減にして。あんたのいい人ぶりっこに付き合わされるのは、もうこりごり」
親切心に浸っていた地味な目がきっと吊り上がった。
偽善的な部分を指摘してやると途端に冷静さを失う。
図星だからだ。
「いい人ぶりっこなんかじゃないわよ! なんでそんなうがった見方しかできないの? 人の心配するのが、人のために行動するのが、そんなに悪いこと?」
「悪いね。あんたの親切は相手のためじゃなくて、自分のためじゃん! いい人ぶって気持ち良くなりたいだけでしょーが」
「最悪ね!! そういうひねくれた考え方しかできないなんて。雨音さんに何があったのか知らないけれど、今までもこれからもそうやって生きていくなんてすごく可哀想な人だと思うわ!!」
正面からまっすぐ睨みつけてくる目が赤らんでいた。
今、こいつは人のためじゃなくて自分のために怒り、感情をむき出しにしている。
結局、誰かのためなんかに本気になれないのだ。自分大好きのくせに必死でそこを隠して、いい人になろうとして。
「ついに本性出したね。いい人ぶりっこさん」
思いっきり唇を曲げて嘲ってやったら、偽善に固められた仮面がたちまち崩壊していった。貧相な唇に囲まれた口が縦長に広がり、悲鳴のような声が飛び出す。
「いい加減にして!!」
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