泡のように消えていく…第三章~Amane~<第39話>
<第38話>
ローズガーデンは今日も暇だ。
そろそろ年の瀬という言葉が巷で聞こえ始め、ちょっと気の早いクリスマスソングが町を彩る時期で、朝からずっと冷たい雨が吉原の町を濡らしている。あとひと月もすれば年末年始の繁忙期が訪れるはずたけど、それまではじっと我慢の子。本指が少ないあたしはしょうがない。
長い待機時間も退屈じゃないほど、携帯の画面に熱中していた。
メール画面を開いて閉じる、また開いて閉じるをさっきから繰り返している。あれきり連絡のない飛鳥にどうメールしようか、迷っていた。素直になるのはあたしの一番苦手なこと。でもそれをしないと、先に進めない。
とにかく会う約束を取り付けて、今度はあたしから飛鳥に言うんだ、もう一度付き合って、って。そして受け入れてもらえたら、きっとなかなかうまくいかないだろうけれど、また逃げ出したくなるだろうけれど、少しずつでも自分のことを話していこう。今度こそちゃんと、飛鳥と向き合いたい。
「きゃー、うっそー!! マジー!?」
繁忙期に備えて店が大量に仕入れた新人の女の子たちが、携帯片手に盛り上がっていてうるさい。きゃあきゃあぎゃあぎゃあ、コンビニの前ではしゃいでる女子高生たちとほとんど変わらない。こっちは大事なメールを打ってるのに、集中力がそがれてしまう。よほど怒鳴りたかったが、やめた。
人にどう思われようが構わないから今までやりたい放題だったけど、これからは少し自分を抑えよう。大人になろう。
「ねーねー、雨音さんもこれ見て下さいよー」
新人の中でも人なつっこい子が、こっちににじり寄ってきて半ば強引に携帯の画面を突きだす。どうしてもあたしを話の輪に入れたくてしょうがないらしい。
「何?」
見せられたのは、あるインターネットのサイトだった。匿名の掲示板で、ローズガーデンのスレが立っている。
なんだ、こんなもので盛り上がっていたのかと半ば肩すかしをくらった気持ちで、仕方なく文字を追った。
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