泡のように消えていく…第四章~Sumire~<第18話>
<第18話>
最初にハルくんに会った時、ハルくんのきれいな顔が、あの男子の顔と重なった。だから初めのうちはハルくんを避けていた。声をかけられてもあんまりしゃべらなかったし、目も合わさないようにしていた。
でもハルくんは自分から、わたしの心に飛び込んできてくれたんだ。
ハルくんは生まれて初めてのバイトでおろおろしてるわたしを、手際よくサポートしてくれた。意地悪なパートのおばちゃんにミスを責められたら庇ってくれたし、呑み込みの遅いわたしに根気よく仕事を教えてくれた。
すぐに気づいた。
この人はチョコをつっ返したあの人とは違う。格好よくてもモテても、心の優しい人もいる……と。
2日続けて2人のシフトが重なって、お客さんの途切れた間にレジの中でいろいろ話した。
やがてメールアドレスを交換した。
最初のデートの帰りにキスをして、3回目のデートでセックスをした。
痛いばっかりで気持ちいいとはちっとも思えなかったけれど、ハルくんは愛される自信をわたしの奥深くへ注ぎ込んでくれた。
「それがさー。まだまだ、足りないみたいなんだ、お金」
「そっか……。ごめんね。わたしが、もっと頑張らなきゃいけないのに」
「何言ってんだよ。園香は十分、頑張ってくれるよ。女子高生でこれだけ稼げたら、大したもんだって」
すべすべして柔らかくて、ちょっと冷たい手が頭を撫でてくれる。優しい感触がお客さんに触れられた嫌な記憶を拭う。
もっと頑張りたい。この人のために。
付き合って2週間目が経ったときだった。
ハルくんは、お父さんの会社が傾きかけていること、多額の借金を背負ってしまったこと、学費も払えなくて実家に帰らなければいけなくなりそうなことを、一気に話した。自ら吐き出す言葉に胸を抉られるように、ハルくんは沈んでいた。
そこまで苦しんでいるハルくんを、その時初めて見た。
ハルくんが辛い思いをするのは嫌だったし、大体実家に帰ったら2人は離ればなれになってしまう。
やっと心から愛してくれる人に出会えたと思ったのに……。
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