泡のように消えていく…第四章~Sumire~<第33話>
<第33話>
<2004年 園香>
「それ、絶対ダマされてんじゃん」
ポテチをかじりながら桃花がしかめっ面で言った。リミが隣でこくこく、頷いている。
デートクラブは今日も暇だ。
女子高生だからこそのバックの高さでキャバクラの時より稼げてはいるものの、最初に予想していた金額にはほど遠い。焦ったわたしは2週間に1度は予備校を休み、こっちへ来ている。
ハルくんのことで頭がいっぱいで、勉強はまったく手につかなくなった。
昨日まで中間テストだったけど、結果はさんざんだろう。
「そんな、ダマすなんて。ハルくんはそんな人じゃ」
「その発言からしてダマされてんだって! リミもそう思うでしょ?」
「おかしいおかしい! 大体今どき、親のためとか。仮にそうだとしたって、彼女こんなとこで働かせないでしょ、ほんとに好きだったら」
桃花とリミの言葉が胸を抉る。
話の流れでうっかりハルくんのことをしゃべってしまったのを、早くも後悔していた。
そりゃ、おかしいなってまったく思わなかったわけじゃない。
愛があったらキスぐらいいいじゃんなんて言わないって、わたしだって思う。
でもわたしはどうしてもハルくんが好きだし、ハルくんのために生きることで、自分が生きてるんだってやっと実感できた。この幸せを失わないためには、ハルくんを信じるしかない。
「ハルくんだって平気なわけじゃないんだよ、エッチしてる時、いつも泣きながら謝るの。デートクラブなんかで働かせてごめんって」
「それ、100パー演技じゃん!」
ポテチを頬張りながらそう言う桃花は、笑ってた。リミも苦笑をこらえきれないでいる。
「そいつ、プロだね。女に貢がせるのがプロの男っているんだよ、涙なんて必要な時にいくらでも流せるんだって」
「そんな……!!」
「こんなことほんとは言いたくないけど。琴乃ちゃん、真面目であんまり恋愛したことないっしょ? 見る目ないから、騙されるんだよ。早いとこ目ぇ覚ましなって」
リミが諭す口調で言って肩に手を置く。
その手を振り払う。
喉がたちまち干上がっていく。血が上った頭が熱い。
第三者の言うことなんて信じなくていいと理性でわかっていても、2人の言葉は意志とは裏腹に、スポンジみたいにするする心に染み込んでいく。
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