泡のように消えていく…第五章〜Sawa〜<第2話>
<第2話>
今日は週に一度のチャイナドレスイベントの日。着たドレスは帰る時、各自待機室のカーテンレールにかけておくことになっているから、殺風景な待機室がそこだけ竜宮城みたいで、場違いに華やかだ。
「その。性病検査、引っかかっちゃって」
親バレに彼氏バレ、そして性病。どんなに売れてる嬢だっていきなり辞めてしまう時はあって、急な退店の理由はだいたいその3つのうちのどれか。
「何に引っかかったの?」
「クラミジアです」
つい、ホッとしてしまう。
治療が辛い尖圭コンジローマや、一生ウイルスが残ってしまうヘルペスじゃなくてよかった。クラミジアなら薬を飲めば治る。
もちろん、クラミジアだって性病は性病。持っているとエイズや他の病気にかかりやすくなるし、悪化すれば将来の妊娠にも影響が出る。でも毎月必ず提出しなきゃいけない性病検査で見つかったってことは、初期段階のはず。
「ほんとに、全然自覚症状ってないんですね。病院で言われてびっくりしました」
「早くわかって、何よりだったね」
「はい。でも、きっともう、お客さんに移しちゃってるし。それが心配で」
「気持ちはわかるけど。そこはわたしたちが心配しても、どうしようもないことよ。『生』を選ぶ時点で、リスクを背負うことは納得してるんだろうし」
知依ちゃんがもう一度、全然納得してない顔で「はい」と言った。
『生』で働いて3年。
運よくわたしは性病になってはいないけれど、いつわが身に降りかかってもおかしくない厄災が、実は心底恐ろしい。検査を義務づけるのはあくまで店内での感染拡大を防ぐためで、入ってくるものを防ぐ手立てはではない。即尺即アナルのサービスを提供している時点で衛生面では大問題だし、お客さんをお風呂に入れてしっかり洗ったって、完璧じゃないんだもの。
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