泡のように消えていく…第五章〜Sawa〜<第7話>
<第7話>
「わたしたちのせいよ。わたしと朝倉さんが、この世界に引きずり込んだんだ」
「たしかに背中は押したかもしれない。でも決めたのは本人だ」
「だとしても。知依ちゃんはここに来る必要のある子じゃなかったのに」
「そんなのは他人がどうこう言うことじゃないだろう」
「……クラミジアで、まだよかった。たとえばエイズとか、取り返しのつかない病気になっても。それでも今と同じことが言えたの?」
朝倉さんは答えない。
いくら使命感を持って働いてるからって、従業員は従業員。所詮店側の人間なんだから、面接の時に性病の恐ろしさなんてちゃんと説明してないに決まってる。
人の入れ替わりが激しくて常に新人を欲する風俗の世界、それも知依ちゃんみたいに業界未経験で売り出して、大きな需要が見込める子が来たとなれば、入店をためらわせるようなことは迂闊に言えないんだ。
立場上、朝倉さんにそこまで期待するのは無茶だとわかっているけれど、わたしの口はもうブレーキがきかない。
「ねぇ。ノースキン、やめられないの?」
「またその話か」
ローズガーデンはもとからノースキンだったわけじゃない。7年前、初めてわたしがここに来た時は普通の大衆店ソープだった。それが今から約3年前、店が危うく傾きかけた時、上の方針で在籍する女の子は全員『生』でプレイすることが決まってしまった。拒否した子は容赦なく首を切られた。
「ノースキンが結果を出したのは沙和だって知ってるだろう。うちのウリは『生』なんだ。今さらやめられない」
「ただノースキンにしただけで、今のローズガーデンがあったと思ってる? イベントをやったり宣伝を工夫したり、いろんな改革に取り組んで、ノースキンはそのひとつだったじゃない」
「そりゃ、沙和には感謝してるよ。無料で研修会やるなんて、それまでは考えられなかったからな」
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