泡のように消えていく…第五章〜Sawa〜<第13話>
<第13回>
「このトシでも雇ってくれるお店ってあるのかなぁ」
「あるみたいだけど、体力的には限界よね。既にわたしだって、20代の頃とは全然違うもの、疲れの度合いが」
「沙和でもそうなんだ」
「うん。でも他のお店に行くぐらいなら、ローズガーデンに戻ってきたら?」
「まだいるの、朝倉さん?」
仕事に厳しい朝倉さんは真面目に仕事をする女の子からは慕われ、そうでない女の子からは煙たがられがちだけど、杏里は前者だ。過呼吸がひどくなって接客中に起こすようになってもクビにされなかったんだから、感謝しているはず。
「いるよ。ていうか、戻ってくること前提に考えちゃうってのは、どうなの? まだ、ダメになるって決まったわけでもないのに」
「最悪の自体を前もって想定しておくのは、傷つかないための予防線だよ」
前よりも肉付きがよくなった手が、膝の上の芽留ちゃんを愛おしそうに撫でる。杏里はあの頃は絶対にしない顔をするようになった。母親の顔だ。
「杏里、強くなったね」
「あんな痛いこと2回も経験してるんだよ? そりゃ、こんなわたしでもさすがに、強くなるよ」
わたしは杏里を過小評価していたのかもしれない。
崩れ始めたフェイスラインで不安を振り切るように微笑む杏里は、『守ってあげたい女の子キャラ』を前面に押し出して成績をキープしていた頃よりも、美しさに溢れていた。
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