泡のように消えていく…第五章〜Sawa〜<第17話>
<第17回>
好きでもない男に唇を吸われたり全身ベタベタ触られる気持ち悪さと戦いながら、AVやイメクラで働いたものの、さすがは悪徳業者、思ったほどの金額にはならない。
稼ぐためには無理なスケジュールで出勤するしかなく、体を壊した。
体重は10キロ近く落ち、髪も肌もカサカサになって、10代の頃だって悩んだ覚えのなかったニキビが大量にできた。それでもストレスに浸食された心を保とうと、ホストクラブに通ったり洋服につぎ込んだりはせず、稼いだ額は生活費を除けばきちんと親に送金した。
東京に家出した娘が毎月何十万も送金してきたら、さすがに怪しまれる。匿名でお金を送っていたけど、そんなことで親の目は誤魔化せない。大都会の中、海に投げ込んだ針を探すようにして、ようやくわたしの居所と今の職業を突き止めた両親は、泣きながら怒りながらイメクラの寮に乗り込んできた。
親子3人、嵐のような話し合いが繰り返された。
親にとって風俗という仕事は、人殺しや泥棒と同じで絶対にやっちゃいけないことで、わたしはどうしてもそこが納得できなかった。
たしかに最初は我慢だらけで、ただ辛いだけで、ちっとも楽しくなかった。でもそんな日々を超えてようやく、働く意義を見出せるようになった。
東京に来て3年が経っていた。
3年の間、わたしは体も心もくたくたになりながら働いているのではなく、プライドと責任を持って仕事に取り組む風俗嬢に成長していた。
……とはいえ、そんな理屈が両親に通用するわけはなく。
そもそも考え方からして違うんだから、話し合ったって解決する問題じゃない。
両親は両親の考えを、わたしはわたしの考えを、それぞれ理解されようとして押し付け合って、傷つけ合った。
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