泡のように消えていく…第五章〜Sawa〜<第22話>
<第22回>
「実はあたしも辞めるんですよね」
雨音さんがぽつんと言った。
わたしは唐突過ぎて言葉の意味を理解するのに数秒かかって、すみれさんか大袈裟な声を上げる。
「えー、もったいない! 雨音さん、やっとランキング入ったのに」
「つっても、5位だけどね。あたしも引っ越すんだ。4月から、彼氏と暮らすの」
「じゃあ、同棲!? もしかして結婚するのー!?」
いやそれはまだわかんないけど、と口ごもる雨音さんの耳もとですみれさんはおめでとうを連発し、雨音さんもこの時ばかりはうるさがらず照れ笑いで応じている。
彼氏ができたことは雨音さんから聞いていた。年下で、前のお店でボーイをしていた人だという。
「いい機会だし、これをきっかけにスッパリ風俗、辞めちゃおうかなって。もう、仕事も決まってる。4月からうららと同じく、OLだよ」
「すごーい! 一気に大前進じゃないの」
「まだ始まってないんだからなんとも言えないし。普通の仕事するの初めてだしね。さすがに、ビビってる」
「雨音さんなら絶対、大丈夫よ」
誰よりも熱心に毎回研修会に参加していた雨音さんを知ってるから、気休めじゃなく自信を持ってそう言える。
風俗は一般社会に適応できない人の受け入れ所のように言われがちだけれど、実際はできる人はどんな環境でだって頑張れるし、遅刻したりいい加減にやる人は、どんな場所でもいい加減。
そういうものだ。
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