泡のように消えていく…第五章〜Sawa〜<第24話>
<第24回>
「会うの、すごい久しぶりなんですよー。最後に会ったのが22歳の時だから、5年ぶりかな。わたしのせいで、家族はめちゃくちゃになったんです。お母さんとおばあちゃんは心労で倒れるし、おじいちゃんはショックでボケちゃうし、弟と妹はお姉ちゃんが殺人鬼だっていじめられて。弟はグレて、妹は不登校になりました。妹、もうハタチなんだけど。今だに就職も進学もしないで家に引きこもってるらしくて。弟は今もわたしのこと、許してないです。もうお姉ちゃんはうちの人間じゃないんだから、家には近寄るなって」
「そう……」
相槌を打つのが精いっぱいだった。
雨音さんもいつもの毒舌を引っ込め、さすがに神妙な面持ちをしている。
すみれさんの言い方がさっぱりしていて全然悲壮感を漂わせていないから、聞いているほうはより深く胸を抉られた。
「今は家族で、隣の県に引っ越してます。おじいちゃんとおばあちゃんは死んじゃって、お父さんとお母さんはだいぶ老けちゃったのか、電話したら老人の声をしてた……。泣かれてほんとに申し訳ないって思って、でも同じくらい嬉しかった。わたしのこと、本当に心配してくれたのがわかったから。今度、弟には内緒にして3人で会うんです」
「よかった……って、言っていいのかな?」
無条件に肯定してしまうのは憚られる。どんな事情があるにしろ、すみれさんの犯した罪は精算できるものじゃない。すみれさんは相手だけじゃなくて、相手の家族も、自分も、自分の家族をも、部分的に殺したんだから。
止まっていた時間がようやく動き出して、大変なのはこれからだ。
それをよく自分でわかっているんだろう、すみれさんの横顔は明るい。
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