泡のように消えていく…第五章〜Sawa〜<第25話>
<第25話>
「わたしがしたことは一生背負っていかなきゃいけないんだし、わたしみたいな人間は幸せになっちゃいけないのかもしれない。だからって、あんな奴に引っかかったばっかりに人生めちゃくちゃなまんまじゃ、悔しいなって。やっとそう思えるようになりました。ソープ嬢もいずれは辞めるつもりでいるけど、自分が何がやりたいのかまだ全然わからなくて。それがわかるようになるためには家族に会うのが第一歩な気がするんです」
「すみれさんはちっとも置いてけぼりじゃないわよ。ちゃんと進んでる」
喉の奥でふくらんだ寂しさを隠そうと、微笑みかけた。
自分が立ち止まったままなのは自分のせいで、先に行く人に嫉妬したりしちゃいけない。
だから、笑顔で見送りたい。
結婚や就職が決まって風俗を上がる子を見るたび(中にはもちろん、戻ってくる子もいたけれど)、同じことを自分に言い聞かせた。
それでもやっぱり、寂しいものは寂しい。
「すっごい、小さな一歩ですけどね。一歩まで行かない。やっと半歩、ぐらいかな」
言いながら小気味よい音で、ブーツのウェッジソールを鳴らす。
本当に置いてけぼりなのは、わたしだ。立ち止まっていることを選び取っているのか、どうしようもないから立ち尽くしているだけなのか、わからなくなってきてしまった。頬を撫でる風が急に冷たくなった気がして、肩を縮めた。
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