泡のように消えていく…第五章〜Sawa〜<第31話>

2015-06-11 20:00 配信 / 閲覧回数 : 900 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Sawa 泡のように消えていく… 連載小説


 

JESSIE

 

<第31回>

 

「辞めてどうするの」

 

「まだわからない」

 

「何、それ。それがわからなきゃ……」

 

「自分の本心に逆らって仕事し続けるのは、もう限界だ」

 

いつも感情を抑えている声に、苦しい響きが混じる。

 

そんなふうに言われたら何も言えなくなる。

 

本当はもっと女の子たちに寄り添いたくても、店の人間であるという立ち位置。朝倉さんがどれだけ深い葛藤を抱えているか、わたしは目の当たりにしている。

 

「だからって。だからって、放り出したら逃げにしかならない」

 

「そうだよな。でも俺だって、神様でも聖人でもないんだ。ずっと思い通りにいかないことに耐え続けてたら、おかしくなる」

 

「……わたしの気持ちは、言ったから。決めるのは、朝倉さんよね」

 

最後にそう言って面接室を出て、自分の個室へ戻る途中泣きそうになっていたのは、朝倉さんに捨てられたような気がしていたからだ。

 

いつからか、朝倉さんの思いには気づいていた。朝倉さんが本当は何を言いたいのかも、わかっていた。

 

 

 

 




カテゴリー