泡のように消えていく…第五章〜Sawa〜<第31話>
<第31回>
「辞めてどうするの」
「まだわからない」
「何、それ。それがわからなきゃ……」
「自分の本心に逆らって仕事し続けるのは、もう限界だ」
いつも感情を抑えている声に、苦しい響きが混じる。
そんなふうに言われたら何も言えなくなる。
本当はもっと女の子たちに寄り添いたくても、店の人間であるという立ち位置。朝倉さんがどれだけ深い葛藤を抱えているか、わたしは目の当たりにしている。
「だからって。だからって、放り出したら逃げにしかならない」
「そうだよな。でも俺だって、神様でも聖人でもないんだ。ずっと思い通りにいかないことに耐え続けてたら、おかしくなる」
「……わたしの気持ちは、言ったから。決めるのは、朝倉さんよね」
最後にそう言って面接室を出て、自分の個室へ戻る途中泣きそうになっていたのは、朝倉さんに捨てられたような気がしていたからだ。
いつからか、朝倉さんの思いには気づいていた。朝倉さんが本当は何を言いたいのかも、わかっていた。
人気記事
JESSIEの最新NEWSはFacebookページが便利です。JESSIEのFacebookページでは、最新記事やイベントのお知らせなど、JESSIEをもっと楽しめる情報を毎日配信しています。