シリーズ<叫び> エピソード1「車待機」〜第2話〜
<第2話>
あたしの月収だって、生理休暇以外は週6日のフル出勤で20万とちょっと。
6日のうち、2本つける日が1日、1本つける日が2日、あとの3日がお茶、て感じ。
見た目はそこそこ、若くもなければやる気も技術もない。そんなあたしだから、風俗で体を張って働いたってそれぐらいしか稼げない。ほんと、普通の仕事と一緒。
インターネットで調べたら、風俗嬢の平均月収は30〜60万と書いてあったけれど、それは成功している店、成功している人の話だ。
無機質な電子音が無音の車内に静かな波を立てる。隣で寝ていた女の子はむくりと起き上がり、ドライバーはさっと電話を取り、あたしの缶チューハイを握る手は震えていた。
待機中はいつも、電話の音に怯えている。あたしじゃなければいいのにと、何千回、何万回、思っただろう。
今日は20時から出勤して、ずっと待機。このままお茶を引くのは嫌。でも、仕事に行くのはもっと嫌。仕事に行って、好きでもない男に抱かれるのが嫌。我ながら、どれだけわがままなんだと思う。
「京香さん、お仕事です。西日暮里向かいますね」
ドライバーが言って車のエンジンが回りだし、なんだ自分じゃないのか、と不貞腐れたように隣の女の子が再びシートに背中を預けた。あたしは残りの缶チューハイを一気飲みし、さっきコンビニで買ったもう1本の、こちらはアルコール度数9%のハイボールもほぼ一気に流し込んだ。血管をめぐるアルコールのせいでお腹が熱く、脳が熱い。
うん、ようやく仕事モードになってきた。好きでもない男(しかも、たいがいブサイク)に好き勝手される仕事なんて、酒の力でも借りないとやってられない。
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