シリーズ<叫び> エピソード1「車待機」〜第4話〜

2015-06-29 20:00 配信 / 閲覧回数 : 1,000 / 提供 : ヴィクトリカ・ゾエ・キレーヌ / タグ : 車待機 連載小説 <叫び>


 

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<第4話>

 

「お疲れ様でーす」

 

仕事から戻ってくると、後部座席には既に2人の女の子が乗っていたので助手席に押し込まれた。おそらくゆとり世代ど真ん中の、やる気なしオーラをしじゅう出しまくってるドライバーが声をかけてくる。

 

「京香さん、もう終了っスよね」

 

「はい」

 

「たぶん、この後入ってないんですぐ帰れると思いますよ」

 

最悪にキモい客とぬるいシャワーのおかげで少しアルコールの抜けた頭をシートに預け、あぁもうこれで今日は仕事しなくていいんだ、しかもオプションもついたから1万持って帰れるし、とホッとしていると、たちまち安堵で意識が朦朧としてきた。

 

 

ふにゃりくだけた脳みそに、後部座席の女の子たちの話し声が突入してくる。

 

たしか、ことみさんと千春さんだっけ。2人ともよくしゃべって、ウザいったらありゃしない。

 

「なんかもう、毎日毎日やんならないほんと? 世間では楽して稼いでるって思われてるけどうちら、全然楽じゃないし、むしろ毎日が苦行だしみたいなさ」

 

「ほんとそう! あたしなんてもうヤバイっすよ、アラサーだもん。いつまでもこんなこと続けてらんないしさぁ」

 

「アラサーって、え、いくつなの千春ちゃん?」

 

「27歳っス」

 

「ハァ全然じゃん!? うちなんてもう29歳、来月30歳なんだよ、やっばーい!!」

 

「えー、全然見えないじゃないっスかー!!」

 

あたしなんざ32歳だよ。しかもほぼ、見た目通りだよ。

 

…って言ってやったら、黙るかなこの人たち。



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