シリーズ<叫び> エピソード1「車待機」〜第5話〜
<第5話>
いや、後で「なんか京香さん、怖くね?」「怖い怖いー。毎日出てるし、借金でもあるのかな?」なんて噂になるに決まってるから、ここは我慢。待機室がない故、他の女の子との関わりがなく一見平和そうな車待機制度だが、実際は待機室がある店よりもずっと人間関係がややこしい。
「でもさー、もう30歳間近になってヘルスはやりたくなくないー?」
「そうっスよねー。うちもエステ行くこと、ちょっと考えました」
ここで言われるエステとはエステティシャンではなく、いわゆる出張マッサージと呼ばれる風俗のこと。サービスはマッサージがメインで、最後はハンドサービス。キス、お触り、お口を使ったプレイ、もちろん本番もなし。
ヘルスに比べればずっとサービスが軽いので、ヘルスで客に好き放題されるのが嫌になって、エステへ移行する子もいる。
が、しかし。
「エステってさぁーマッサージしなきゃいけないんでしょ? めんどくさくない!? あたし、絶対無理―!!」
「うちも無理っス、マッサージなんて!! 覚えるのもやるのも、想像するだけで超ダリー」
「めんどくさいよーエステは、絶対。だったらあたし、まだヘルスのほうがいいな」
こんなところで働いていると、3日に1度はこんな会話を聞く。かく言うあたしも、あの人たちをやる気ないだの甘えてるだの、馬鹿にできない。指名をとるため努力するのも、もっと稼げる店に移るのも、エステに行くにも、昼間の仕事に就くのも、すべてが面倒くさい。
あたしは、否あたしたちは、自分の環境を変えるためのエネルギーが決定的に不足している。
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