シリーズ<叫び> エピソード1「車待機」〜第7話〜
<第7回>
家賃5万円のワンルームに帰ると、メイクも着替えもする前にまず、お酒を作る。
わざと濃いめに作ったカルピス焼酎を傾けながら朝のニュースを見ていると、某有名大学教授が教え子にわいせつ行為を強要し訴えられたなんて話題が取り上げられていた。世の中のことにほぼ興味がないあたしの脳にも顔と名前がインプットされてるくらいだから、なかなか名の知れた人だったんだろう。それだけに、朝からなかなか、センセーショナルな扱いをされている。
テレビカメラとマイクに囲まれ、冷や汗だらだら流しつつ、聞いてられないようなひどい弁解を続ける某有名大教授を見ながらカルピス焼酎を呷(あお)っていると、メラメラ腹が立ってきた。
男なんてみんな、こいつと似たりよったり、くだらないものをぶら下げてくだらないことを考えてるだけ。
なんで、よりによって、あたしはそいつらを悦ばすために体を張って生きてるんだ?
どうしてこんなことになっちゃったのか、大量のアルコールで空転する頭で考えてみる。短大卒業後に勤め出した会社の業績が傾き、たった半年でリストラにあったからか。再就職活動と平行で当面の生活費を稼ぐため、キャバクラで働いていた時に出会ったホスト、客から本カノに昇格、ナンバーワンになるという彼の夢を叶えるためあたしはキャバクラからヘルス、ヘルスからソープとお決まりの転落コース、挙げ句の果てに妊娠を告げようものなら、ソープ勤めから帰ってくると部屋はも抜けの空で、あたしを落とすところまで落としてあとはとっとと逃げ出した、あいつのせいか。
泣く泣くおろした、あたしが殺してしまった、あの子のせいか。
その後はもう、まともに恋をするのもまともに働くのも嫌になって、あちこちのヘルスやソープを転々として、いつのまにか32になってしまった。今の店はもう2年もいる。暇な代わりに当日欠席にも遅刻にも全然厳しくないし、指名を取れ取れというプレッシャーもなくて、楽だから。
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