シリーズ<叫び>エピソード2「裏取引」〜第2話〜
<第2話>
「全然、意外じゃないっしょ、意外じゃ。モロじゃん。この前なんてさ、ひどかったよね山部さん。美帆さん送って、そのまま客の家の前で待機してた時」
「はいはい、あん時ねー」
運転席の山部さんが弾んだ声で返事する。待機中はいつも携帯ゲームに熱中している山部さんだけど、こういう噂話は大好きですぐ煽るし、すぐ首を突っ込んでくる。
おそらくいいトシだと思われるが、渋谷でちゃらちゃらナンパしてた若者が、そのまま40代になってしまったような外見で、見た目といい、性格といい、まったく信用できない。
そもそもわたしはこの風俗という業界において、店も客も従業員も女の子も誰ひとり信用してないんだけど。
23歳にして、悟ってしまった。人は信じちゃいけない。
「あん時さぁ、ひどかったんだよー。客が窓開けっぱなでさ、喘ぎ声モロ聞こえ。俺らだけじゃなくて、そのあたり通った人全員に聞こえてたんじゃない? つい、沙恵ちゃんと2人で車の外出て、窓の下まで行っちゃったよね」
「うん。2階だからすんごいよく聞こえた。細かい会話とかも全部」
「わーやめて、その内容とか言っちゃダメ!! さすがに露骨過ぎるよー」
芽衣子さんが本気で引いた顔をしている。
芽衣子さんはわたしがこの店に入ってきた時、マッサージを教えてくれた研修の先生で、昼間はエステティシャンとして働いていて、週に1度か2度、研修や自分のお客さんの相手をするため、出勤する。
たぶん、本当にお店本来のルールに則った働き方をしているから、他の女の子がサービス外サービスに手を染めていると知ると、いたたまれないものがあるんだろう。
かといって、自分だってそういう店だと知って働き続けているわけで、別にそんな女の子たちを批難したりはしない。
大人だ。
人気記事
JESSIEの最新NEWSはFacebookページが便利です。JESSIEのFacebookページでは、最新記事やイベントのお知らせなど、JESSIEをもっと楽しめる情報を毎日配信しています。