シリーズ<叫び>エピソード2「裏取引」〜第2話〜

2015-07-06 20:05 配信 / 閲覧回数 : 1,050 / 提供 : ヴィクトリカ・ゾエ・キレーヌ / タグ : 裏取引 連載小説 <叫び>


 

JESSIE

 

<第2話>

 

「全然、意外じゃないっしょ、意外じゃ。モロじゃん。この前なんてさ、ひどかったよね山部さん。美帆さん送って、そのまま客の家の前で待機してた時」

 

「はいはい、あん時ねー」

 

運転席の山部さんが弾んだ声で返事する。待機中はいつも携帯ゲームに熱中している山部さんだけど、こういう噂話は大好きですぐ煽るし、すぐ首を突っ込んでくる。

 

おそらくいいトシだと思われるが、渋谷でちゃらちゃらナンパしてた若者が、そのまま40代になってしまったような外見で、見た目といい、性格といい、まったく信用できない。

 

そもそもわたしはこの風俗という業界において、店も客も従業員も女の子も誰ひとり信用してないんだけど。

 

23歳にして、悟ってしまった。人は信じちゃいけない。

 

「あん時さぁ、ひどかったんだよー。客が窓開けっぱなでさ、喘ぎ声モロ聞こえ。俺らだけじゃなくて、そのあたり通った人全員に聞こえてたんじゃない? つい、沙恵ちゃんと2人で車の外出て、窓の下まで行っちゃったよね」

 

「うん。2階だからすんごいよく聞こえた。細かい会話とかも全部」

 

「わーやめて、その内容とか言っちゃダメ!! さすがに露骨過ぎるよー」

 

芽衣子さんが本気で引いた顔をしている。

 

芽衣子さんはわたしがこの店に入ってきた時、マッサージを教えてくれた研修の先生で、昼間はエステティシャンとして働いていて、週に1度か2度、研修や自分のお客さんの相手をするため、出勤する。

 

たぶん、本当にお店本来のルールに則った働き方をしているから、他の女の子がサービス外サービスに手を染めていると知ると、いたたまれないものがあるんだろう。

 

かといって、自分だってそういう店だと知って働き続けているわけで、別にそんな女の子たちを批難したりはしない。

 

大人だ。

 

 



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