シリーズ<叫び>エピソード3「ヒモ」〜第2話〜
<第2話>
「秋穂さん、お疲れ様―!」
自宅出張からのラブホテルからのビジネスホテルと、現場から現場へ店の車で移動、3件仕事をこなして事務所が入る雑居ビルに戻ってくれば、既に朝の4時を回っている。
待機室にはあたしと同い年で昼間はロミロミ・マッサージのお店(女性もお客さんで訪れる、非常に真面目なリラクゼーションショップ)で働いているいずみと、やはり昼間もメンズエステ(こちらは男性専用で少しエッチな要素もあり、ただし店舗型をとっており、出張マッサージと違ってハンドフィニッシュがない)で働くユナ、週3でうちの店、週3でホテルの出張マッサージサービス(よく部屋に案内が置いてある、60分で4800円とかの)で働く香織がいた。
今夜はみんな比較的忙しかったらしく、テンションが高い。これでひと晩ド暇だと、早朝の待機室はお通夜のような状態になる。
「秋穂さん、疲れてるでしょー? 顔色悪いよぉ、フェイシャルやってあげたーい」
と、クマくっきりのゴシックメイク状態であろうあたしの顔を覗き込んでくるのはいずみ。エステティシャンの資格を持ついずみでさえ、昼の仕事一本で食べていくのが難しいほど、リラクゼーション業界の給料は激安だ。
「疲れてるよー、だって22時から3連チャンだよ? まったく休みナシ、お腹減ったぁ」
「じゃ、ちょうどよかった。これあげる。実家から送ってきたの」
なんて、金髪ロングの派手な見た目とは裏腹に気さくな性格のユナが、温泉まんじゅうがぎっしり詰まった箱を差し出してくるので、遠慮なくいただいた。
甘さ控えめでなかなかおいしくて、ひとつのつもりがふたつ、みっつとどんどん空っぽの胃に落ちていく。草津にあるユナの実家はお土産屋らしい。
親とは仲がいいと言うが、
「あたし絶対東京でひと山当てるんだー、当てるまでは戻ってこねぇからな、なんて親兄弟親戚に大ミエ切って出て行っちゃったからさぁ。こんなハンパな状態で戻れないよねぇ」
と、半年前に飲みに行った時苦笑してたっけ。
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