Yumika〜風俗嬢の恋 vol.2〜<第12話>
<第12話>
「ダメな男、最低な男、なんであんなのに惚れちゃったんだろう。痛いぐらい思っても、その実好きで好きでしょうがない。そうやってダラダラ付き合い続けちゃう女の子、多いわよ。あたしの知り合いにもいるけれど」
二人っきりの休憩室の中、まゆみさんは壁にもたれながらミルクティーのペットボトル片手に言った。
あたしはいつも通り、床にぺたんと座って煙草を吸っている。時刻は木曜日の夕方五時半。そろそろピークタイムが訪れ、一日の勤めを終えた男たちが身体と心の疲れを癒しにやってくる。
理寿ややよい、夜だけ勤める学生組も、そろそろ出勤する頃だ。
あたしは秘密主義者なのか、やたらプライドが高くて人に弱みを見せるのが嫌なのか、こうやって誰かに悩みを打ち明けることなんてあんまりない。
統哉のことは理寿にも相談出来ない。こんな仕事をしているくせに男を好きになることがわかんないなんて言う理寿には、こんな悩み理解出来るはずもないし、むしろ相談されたところで困るだろうし。
しかしまゆみさんの前では、あたしは驚くほど無防備になって、ついつい自分をさらけ出してしまう。それはまゆみさんの包容力ある大人の女性の雰囲気のせいもあるけれど、リスカの傷のせいもあると思う。もろいところを持っている人には、自分のもろさも見せやすい。
「たぶん、ゆかちゃんは寂しくて寂しくてしょうがないんじゃない?人に頼られたり甘えられたり必要とされたり、そういうことに飢えてるんじゃないの?」
「そうかもしれません」
「だからそういうダメ男でも、頼られるのが嬉しいのよ。そもそも恋って、マイナスの要素があればあるほど盛り上がるものだし」
マイナスの要素、か。
彼氏はホストで彼女は風俗嬢。ハタから見れば、ダメダメを絵に描いたようなカップルだ。
マイナスの要素があればっていうより、マイナスの要素だけしかない気がする。二人で夜の世界を抜け出そう、表の世界で真面目に頑張ろう……そう誓い合った付き合いたての頃の日々が、遠い過去に思える。ほんの数ヶ月前の話なのに。
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