シリーズ「叫び」エピソード4 アンダー〜第12話〜

2015-09-15 20:00 配信 / 閲覧回数 : 14,341 / 提供 : ヴィクトリカ・ゾエ・キレーヌ / タグ : アンダー 連載小説 <叫び>


 

JESSIE

 

<第12回>

 

「わかったよ……いいよ、もう、コンビ決裂」

 

お母さんがくるり、背を向けた。

 

拒絶された痛みがあたしを貫いた。

 

「あんたももう13歳だから、いくらでも体売って1人で生きていけんでしょ? いや、あんたはそんなことしないか。善意ある大人を頼りたいんだよね? 勝手にして。これからは別行動にしよ」

 

「ま……、待って」

 

ぺたぺた、スーパーで売ってた680円のサンダルで歩き出すお母さんの後を、とりあえず追いかけた。

 

もう2度とあたしを受け入れてくれない背中は、痛々しいほど痩せていて、可哀想だと思ってしまった。

 

「ついてこないでよ。あんたなんか、産まなきゃよかった!!」

 

自然と足が止まった。

 

お母さんの細い背中は、どんどん遠ざかる。

 

「あんたのせいで、せっかくできた男はみんな逃げていく。コブつきは面倒だからって。あんたさえいなけりゃあ、あたしはすぐ水揚げしてもらえたんだよ!! こんなババアになる前にな!!」

 

涙が一筋頬を伝っていって唇の間に流れ込んだ。苦しょっぱい味がした。

 

無理だ。この人はもう、この世界のどこでも、生きていけない。

 

そう思ったから、あたしは河川敷に転がってたブロック塀を片手に、お母さんを追いかけた。

 

追いついて、一瞬振り返ったお母さんは、きゃ、と間の抜けた悲鳴を上げた。

 

一発目は肩に当たって、ぎゃっ、と今度は本気の悲鳴が上がった。二発目は頭に、三発目も頭に、四発目から先は覚えていない。

 

どうして? と訴えてくる瞳だけが、今でも心臓の真ん中に焼き付いている。

 

2年前、あたしは初めて人を殺した。

 

唯一のお母さんを、唯一の運命共同体を、唯一の親友を、唯一の自慢を、唯一の宝物を。

 

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