シリーズ「叫び」エピソード4 アンダー〜第12話〜
<第12回>
「わかったよ……いいよ、もう、コンビ決裂」
お母さんがくるり、背を向けた。
拒絶された痛みがあたしを貫いた。
「あんたももう13歳だから、いくらでも体売って1人で生きていけんでしょ? いや、あんたはそんなことしないか。善意ある大人を頼りたいんだよね? 勝手にして。これからは別行動にしよ」
「ま……、待って」
ぺたぺた、スーパーで売ってた680円のサンダルで歩き出すお母さんの後を、とりあえず追いかけた。
もう2度とあたしを受け入れてくれない背中は、痛々しいほど痩せていて、可哀想だと思ってしまった。
「ついてこないでよ。あんたなんか、産まなきゃよかった!!」
自然と足が止まった。
お母さんの細い背中は、どんどん遠ざかる。
「あんたのせいで、せっかくできた男はみんな逃げていく。コブつきは面倒だからって。あんたさえいなけりゃあ、あたしはすぐ水揚げしてもらえたんだよ!! こんなババアになる前にな!!」
涙が一筋頬を伝っていって唇の間に流れ込んだ。苦しょっぱい味がした。
無理だ。この人はもう、この世界のどこでも、生きていけない。
そう思ったから、あたしは河川敷に転がってたブロック塀を片手に、お母さんを追いかけた。
追いついて、一瞬振り返ったお母さんは、きゃ、と間の抜けた悲鳴を上げた。
一発目は肩に当たって、ぎゃっ、と今度は本気の悲鳴が上がった。二発目は頭に、三発目も頭に、四発目から先は覚えていない。
どうして? と訴えてくる瞳だけが、今でも心臓の真ん中に焼き付いている。
2年前、あたしは初めて人を殺した。
唯一のお母さんを、唯一の運命共同体を、唯一の親友を、唯一の自慢を、唯一の宝物を。
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