Yumika〜風俗嬢の恋 vol.2〜<第14話>
<第14話>
夜は思ったほど客が入らず、女の子があまってしまう状態で、理寿とさおりさん以外は暇していた。富樫さんに勧められ、あたしは十一時に早上がりすることにした。久しぶりにワゴンに乗らず、電車で帰る。夜十一時台の電車はくたびれた乗客を詰め込んで、空気はどんより濁ってた。
あたしと統哉の愛の巣は住宅街の奥にあって、駅を出て徒歩十五分。ちょっと遠い。しばらくは周りに何人か、同じ方向に向かって歩く勤め帰りらしい人たちがいたのに、一人また一人といなくなって、気付けばブロック塀に囲まれた狭い路地には、あたしのミュールの音だけが不気味に響いている。他に、音はない。道の両手を塞ぐ家々はどこも窓の明かりが消えて、みんな息を止めているようだ。
今頃、統哉は何してるんだろう?
この時間だったらまず、勤務中のはず。今統哉の隣には誰が座っているのか、統哉はその子の手を握ったり、甘い言葉をささやいたりしているのか。
あたし以外の女の子に色目を使って、本気にさせる。それがホストだってわかっちゃいるけど。
やっぱりあたしには、統哉は向いてないのかもな……?
そんなことを考えながら星のない夜空を見上げた時、近づいてくるせかせかした足音に気付いた。鋭く軽い音は、たぶんハイヒールを履いた女だ。
携帯を取り出しながら自然な雰囲気を装って止まると、足音も止まる。走り出せば、足音も走る。振り返ると長い髪を山姥のように風になびかせ、目をぎらぎらさせた女があたしを睨んでいた。
「待てよ! このヤリマン!!」
つづく・・・
人気記事
JESSIEの最新NEWSはFacebookページが便利です。JESSIEのFacebookページでは、最新記事やイベントのお知らせなど、JESSIEをもっと楽しめる情報を毎日配信しています。