フェイク・ラブ 第四章〜Iori〜<第3話>

2014-07-06 20:00 配信 / 閲覧回数 : 1,041 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Iori フェイク・ラブ 連載小説


 

レポート

 

<3回目>

 

「お荷物、おまとめしますか?」

 

右腕にひとつ、左腕に2つ。計3つの紙袋が気になって言うと、女は少し考えてから、「じゃあこれと一緒に」と、右腕に提げていた少し小さめの袋を差し出す。

 

なるべく荷物が大きくならないよう、数サイズあるブランドロゴが印刷された紙袋の中から、ツインニットとスカートと紙袋がぎりぎり収まるものを取り出す。

 

「今日はいっぱいお買い物したんですか?」

 

そう言うと女は一瞬、バツの悪そうな顔をした。

 

「えぇ。つい、いっぱい買ってしまって……」

 

「ちょうどお正月のセール終わって、どこも春物出始めの時期ですもんねー。お買い物、楽しいですよね」

 

えぇ、と女は浅く首を上下させた。

 

肉付きのいい首に、深く刻まれた皴を発見する。さっきはあたしと同じくらいか少し上って思ったけど、もっと歳、いってるのかもしれない。

 

店の入り口で王様への献上品のように丁寧に紙袋を捧げ、ありがとうございますと送り出す。

 

振り返らない背中は想像通り、駅のほうじゃなくて歌舞伎町方面へと向かう。

 

これから歌舞伎町の箱ヘルだか、ホテヘルだかで、お仕事なんだろうな、あの人。

 

時々見かけて、声もかけたことがあったけれど、買い物していったのは初めてだった。

 

ツインニットに9800円、スカートに18000円。3万近くポンと出せて、その上既にあれだけ買い物してるんだ。

 

そういえばこの前見かけた時も、両腕に紙袋だらけだった。もしかしたら買い物依存症ってやつかもしれない。

 

前勤めてた箱ヘルにもいたっけ? 風俗で働いてるうちに、どんどん精神病んでって、着飾ることぐらいしか楽しみがなくなっちゃった子……。

 

買う側も風俗嬢なら、売る側も風俗嬢。

 

ショップ店員の女の子は、店員としての給料だけじゃ生活を維持できなくて、キャバや風俗で働く子がすごく多い。

 

どこかの客がどこかの女に払ったお金が、巡り巡って、やはり夜の女であるあたしの懐に流れてくる。それがこの町の経済構造だ。

 

 

 




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