泡のように消えていく…第四章~Sumire~<第20話>

2015-04-08 20:00 配信 / 閲覧回数 : 957 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Sumire 泡のように消えていく… 連載小説


 

JESSIE

 

<第20話>

 

「正直嫌だけど、園香が頑張るって言うなら俺は応援するよ。大丈夫、俺はそういう仕事に偏見とかないし。園香のこと、信じてるから」

 

止められることを期待してたのに、逆に励まされてしまって、やる、としか言えなかった。

 

「ごめんな、園香。お前にばっかり負担かけて」

 

キャバクラやデートクラブで働き出してから、ハルくんはセックスの最中に謝るようになった。

 

わたしの頭を抱きかかえ、すでに最深部に達しているのにさらに奥まで突こうというのか、必死に腰を動かしながら。

 

「俺は最低だな……。こんなに可愛い園香に、辛い思いさせて。俺のせいでさ」

 

「ううん、いいの……。わたし、ハルくんに好きって言ってもらえたら、それだけで幸せ」

 

ハルくんの華奢な背中に腕を回してしがみつき、激しい快感に痺れた意識で、愛しい人がくれた言葉を噛みしめる。

 

ほっそりした肩が震えている。声が上ずる。顔は見えないけれど、泣いているのだとわかる。

 

大丈夫だ。

 

ハルくんはわたしをちゃんと愛してくれている。愛のせいで苦しんでいる。

 

だからわたしは、その愛に応えなきゃいけない。

 

「ハルくん、謝らないで。わたしが好きでやってることだから。ハルくんと一緒にいるためなら、わたしはなんだってできるよ」

 

ごめん、ごめんな。それでもハルくんは繰り返し謝る。

 

いいの、いいのとわたしも繰り返す。

 

セックスの身も心もとろけるような快感は、愛し愛されることの喜びと辛さは、あまりにも生々しくて鋭い感覚で、生きている、という当たり前のことを実感させてくれる。

 

ハルくん自身がわたしの奥で弾けた。

 

ハルくん。ハルくん。園香。園香。

 

2人の唇から何度もこぼれ落ちる名前は混ざり合って、体の中心がひりひり熱くて、もう快感と苦痛の区別さえつかない。

 

 




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