『メゾン・ド・エレクトノエル』〜PTSDと記憶障害、そして最悪なオトコとの出会い<前編>〜
『211号室』<前編>
今回書くのは、何年も前のできごと。ダンナの前につきあっていたカレシと出会った時のとても酷い酷いお話を書いてみたいと思う。
あたしの気分障害は最も酷い時期だった。前の結婚の失敗、親との断絶、長子との別れ……。受け止め切れない出来事の数々……。
なんとか生きてはいたけれど、記憶がなくなることも頻繁で、パニック発作の過呼吸なども日常茶飯事だった。そんな日々に出会ったのは、さらに私の病を酷くさせるような男だった。
酷く喉が渇いて目が覚めた。ベッドの中は少しじめっとして汗ばんでいた。
エアコンもテレビも付けっ放しだった。
正月番組ってやつは、どうしてこうもつまらないのだろうな、年末番組はまだ笑えるのに。
しかし、おめでとう、おめでとうって、年が明けたところで何もめでたくない。
街は人だらけでごみだめになり、何もかもが正月仕様とやらで割高になっていたり、不便になっているだけだ。
有難いことは、お風呂屋が元旦から開いてるって事くらいしかない。
まぁ、そんなことより何か飲みたい。
『はああぁぁぁっ…………!!!!????』
身の毛がよだった。いや息が止まった。
見たこともない若い男が隣のコタツの中で寝てる。
『どうして? 誰? 誰? 誰? 誰? 何で? 何で? 何で? 何で?』
頭の中で何百回も繰り返してる。
パニックってのは、予想や準備していた時には起こらないものなんだって、始まってから思い出す。
ポンコツのあたしは、自分の脳内で処理できない事が多少でもあると、パニック障害による発作がもれなくやってくる。
症状は、処理内容に強度はよりけりだけれども、各所の身体生存機能が徐々に麻痺してしまいフリーズしてしまう。
リミットは20分〜40分ほど。
要するに、そこそこ苦しみながら身動きできずに、呼吸できなくなって、死んでいくわけです。
フリーズまでに服薬するか、もしくは確実に自分の身の安全が確保されたことが確信できれば自然と治まる。
その男がだれなのか、起こしてる余裕も猶予も、今のあたしにはない。
『薬はどこだ!』これだけで部屋中探しまくる。
いつも同じ場所に置いてんじゃなかったっけ? なんでないんだ。
どこ置いたんだろう? なんでないの?
『ないないないないないないないないないないないないないないないない…………』
呼吸が乱れる。息が詰まる。手足が痺れてきた。尋常じゃない汗が溢れ出る。
確かに、ここに置いたのに。見当たらない。
泣けてくる。なんでないのか分からなくて、情けなくて、涙が出てくる。
そんなに広い部屋でもないのに、見つからない。しかも、この男も起きない。ピクリとも動きもしない。
あたしが動けなくなるまで、リミットはあともう少しかも知れない。誰か分かんない男とここで死んだら……。どうなってしまうんだろう?
<後編>に続く
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