Yuuna〜風俗嬢の恋 vol.3〜<第16話>
<第16話>
ふぅん、と灰皿に灰を落としながらちょい悪オヤジが言った。
「でもそれって、たぶんもうすぐ終わるね」
「えっ」
「だってさ、なんか詳しく話聞いてるとずいぶん軽い男みたいじゃん、その人。やよいちゃん、こんなところで働いてるから、舐められてるんじゃない? 都合いいこと言って、エッチがしたいだけなんだと思うよ」
「……」
「ちゃんと確認したほうがいいよ、その人の携帯とか」
そこまで言ってあたしが顔をこわばらせることに気付いて、慌ててフォローを入れる。
「あ、ごめん、今の一般論だから。そんなに落ち込まないでよ」
「落ち込んでなんか、いません」
拗ねたような声になった。
その人が帰ってからもずっと、冷たい、妙にリアルさを持った一言が頭の裏にこびりついて、離れなかった。ようやくお客さんが途切れたおかげでずっと休憩室にいたもんだから、暇が手伝ってひとつの思考ばかりが脳みそをぐるぐる回る。
たしかに、軽いのは本当だ。
いきなり声をかけてきて、いきなりデートに誘ってきて、いきなりキスしてきていきなり付き合って。何もかも、唐突過ぎる。
あの人の言うとおり、あたしは舐められてるんだろうか? 身体目当てなんだろうか?
そこまで考えたところで正義くんのあの邪気のない笑顔が浮かんできて、そんなことないと慌てて打ち消す。
大丈夫だ、あんなに可愛く笑える男の子が、身体目当てで女の子に声をかけたりするわけない。もとより正義くんのことを何も知らない、ちょっと話を聞いただけの人の言葉を鵜呑みにするなんて、間違ってる。
こんな疑いを持つこと自体正義くんに失礼なことだと気付いて、自分が嫌にさえなった。
急に正義くんと繋がりたくなって、他の女の子たちと同様、休憩室に置きっぱなしにしてある携帯を見る。出勤前に送ったメールの返事がまだ来ていない。
黒い不安がどっと襲ってきて心臓をすっぽりくるんでしまう。
人気記事
JESSIEの最新NEWSはFacebookページが便利です。JESSIEのFacebookページでは、最新記事やイベントのお知らせなど、JESSIEをもっと楽しめる情報を毎日配信しています。