Kiyomi〜風俗嬢の恋 vol.4〜<第13話>
<第13話>
おっさんが逆ギレして富樫さんに詰め寄ったり、破片を片付けなきゃいけなかったり、ビビったお客さんたちがプレイ途中で続々帰ってしまったり……。
そんな騒動のなかで、店は緊急措置として、営業を停止して、女の子たちは控え室に集められた。
土曜の夜で、本来なら一番の稼ぎ時のはずだった。
使い古しのセーラー服やルーズソックスが、洗濯籠の中でもわんと臭いを放つ控え室の中は、空気が暗い。
普段はあれだけ優しく、人格者としてみんなから慕われている香耶がヒステリックに怒っていた。
「清美何やってるの、何やってるのねぇ、自分が何したかわかってるの!?」
「……」
「あんな問題起こして、タダで済まされるとでも思ってるの!? なんで、あんな、お客さんに暴力振るうなんて」
「わかってる。わかってるけど、許せなかった」
香耶は一瞬、顔の内側いっぱいに怒りを膨れ上がらせて、それから風船の空気を抜くようにふうと深くため息をついた。
他のみんなは文字通りあたしを遠巻きにしていた。
気の弱いやよいはまだ目尻に涙の跡が残っていて、ゆかによしよしと慰められている。
最近入ったあやという女の子が、膝を抱えて好奇心を隠さない顔で、あたしを見ていた。
りさはやっぱり何を考えているのかわからない黒々とした目をさまよわせていた。あたしがキレたことに興味なんかないようだった。
「さおりさんの気持ち、わかる気がします」
その、りさの声だった。芯の通らない、はかなげで細くて、でもか弱い女の子を守りたい傍に置きたい……。そういう、男たちの暗い欲求をそそる、声。
「誰だってさおりさんみたいに言われたら、頭にくると思います。女性に対しておばさんだなんて、失礼です。だいたいさおりさん、まだ若いのに」
カチンと来た。
そう言う自分はまだ18歳のくせに……。って、そんな次元のことじゃない。
あたしをかばおうとしていることに、それが当たり前だと思っている顔に、ささくれた心が沸騰する。
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