Kiyomi〜風俗嬢の恋 vol.4〜<第14話>

2014-02-01 20:00 配信 / 閲覧回数 : 1,099 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Kiyomi 連載小説 風俗嬢の恋


 

JESSIE

 

<第14話>

 

りさが顔を上げて、控え室の中をぐるりと見回した。ナンバーワンの自分がこの中で一番えらいと信じて疑わないような、上から目線の瞳。

 

「悪いのは向こうで、さおりさんが責任を感じる必要はありません。あたしたち、富樫さんにもそう訴えるべきです。みんなでさおりさんのこと、守りませんか」

「何が守るだよ」

 

睨み付けたあたしを、りさは不思議そうにきょとんと見つめる。

 

りさは天然で、邪気がない。すべては純粋な善意から出たことで、だからこそ腹が立つ。

 

「何が守るだよ、何があたしの気持ちがわかるだよ!? えらそうに。あんたにあたしの気持ちがわかるもんか」

「あたしは。あたしはただ、これからもさおりさんと一緒に働きたくて」

「うるさいよ偽善者。ほんとは、ざまあみろって思ってんだろ? ナンバーワンからツーに降格して、おばさんって言われて、最近は制服も似合わなくて。あたしのこと、笑いたいんだろ? これであたしがクビになったら、あんたのところにあたしの客が流れ込んで、大ラッキーだよな!?」

 

日本人にしては茶色みの強い目が大きく見開かれた。

 

こいつが嫌いだった。こいつのすべてが嫌いだった。

 

何を考えているかわからない目、大して可愛くもないのになぜか男に好かれる顔、デブ体質のあたしには絶対手に入らない華奢な足。何もかもが、ハナについた。

 

香耶が涙声で言う。

 

「清美、やめなよ」

「うるさい、あんたは黙ってて。だいたいお前目障りなんだよ。最近入ってきたくせに、でかい顔しやがって」

「あの、あたし」

「黙れって言ってるだろ!」

「清美やめて、りさちゃんは清美を守ろうとして」

 

あたしを押さえつけようとする香耶を振り払うと、ガタンと派手な音がして、香耶の身体の右半分が、ロッカーの扉に叩きつけられた。

 

バカにされたくない。見下されたくない。むしろ人から大事にされたい、尊敬されたい、敬われたい。

 

そんな立派な人間でもないくせに、本気でそう、思っていた。

 

 

 




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