Kaya〜風俗嬢の恋 vol.5〜<第25話>

2014-03-04 20:00 配信 / 閲覧回数 : 1,121 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Kaya 連載小説 風俗嬢の恋


 

JESSIE

 

<第25回目>

 

お客さんが顔を上げる。

 

「なんで? 立派な特技じゃん? フェラ上手いってさ、女として最高のことだよ? 名誉だよ?」

「女としては良くても、人としてはどうなのかって、時々思います」

 

つい、本音が出た。言ったそばから、お客さんに自分を見せ過ぎたことを後悔していると、薄い頭が近づいてくる。

 

「まゆみちゃん、よく聞いて。いい? この世の中には、性欲をもてあましてヤバイ犯罪に走る人が、ものすごいたくさんいるんだよ。痴漢したり強姦したり盗撮したり……。僕だってまゆみちゃんに会えない間ムラムラして、何度痴漢しそうになったことやら」

「なんですか? それ、危ない」

 

つい、笑ってしまう。目の前のお客さんもちょっと頬を緩める。

 

「そうなんだよ、危ないんだよ、風俗がない世の中っていうのは。つまりね、風俗は絶対社会に必要なものなの。男ってイキモノがいる限り、なくなっちゃいけないもんなんだよ。わかる?」

「まぁ、わかる気はしますけれど」

「まゆみちゃんはさぁ、変な犯罪の減少に貢献してるんだよ。それって、誰でも出来るわけじゃないしすごい立派なことじゃん」

「そうなんですかねぇ」

 

言葉にすると立派に聞こえるけど、実際はおっぱいを触らせてあそこを触らせて、ペニスをしごいたりしゃぶったりするだけなのに。大体、ムラムラした人がみんな性犯罪に走るわけでもない。

 

でも、お客さんは、声に力を入れる。

 

「僕が言いたいのはね、自信を持ってほしいってこと。こんな仕事だって思ってるのかもだけど、仕事ってどんなものでも、必ず誰かの役に立ってるはずなんだ。頑張って仕事してる人は、やってることがどんなことであっても、尊敬されるべきだと思う」

「……」

「少なくとも僕は、まゆみちやんのこと、立派だって思ってるよ」

「ありがとう、ございます……」

 

言われたこと全部を丸呑みしたわけじゃないけれど、少しだけ気が楽になった。

 

たしかに、中には誇りを持って、頑張って仕事をしている人もこの業界にいる。人から後ろ指を指されるようなことでも、自分はそれでいいんだって、自分はこの仕事が好きなんだって、胸を張って生きてる人たち。

 

そういう人はきっと風俗嬢じゃない女の子の目から見たって、格好よく映る。

 

そんなふうになれるほど、あたしはまだ大きくない。でも、自分がやってることが決して無意味じゃない。これからはそれを信じていけると思った。

 

 

 




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