Kaya〜風俗嬢の恋 vol.5〜<第25話>
<第25回目>
お客さんが顔を上げる。
「なんで? 立派な特技じゃん? フェラ上手いってさ、女として最高のことだよ? 名誉だよ?」
「女としては良くても、人としてはどうなのかって、時々思います」
つい、本音が出た。言ったそばから、お客さんに自分を見せ過ぎたことを後悔していると、薄い頭が近づいてくる。
「まゆみちゃん、よく聞いて。いい? この世の中には、性欲をもてあましてヤバイ犯罪に走る人が、ものすごいたくさんいるんだよ。痴漢したり強姦したり盗撮したり……。僕だってまゆみちゃんに会えない間ムラムラして、何度痴漢しそうになったことやら」
「なんですか? それ、危ない」
つい、笑ってしまう。目の前のお客さんもちょっと頬を緩める。
「そうなんだよ、危ないんだよ、風俗がない世の中っていうのは。つまりね、風俗は絶対社会に必要なものなの。男ってイキモノがいる限り、なくなっちゃいけないもんなんだよ。わかる?」
「まぁ、わかる気はしますけれど」
「まゆみちゃんはさぁ、変な犯罪の減少に貢献してるんだよ。それって、誰でも出来るわけじゃないしすごい立派なことじゃん」
「そうなんですかねぇ」
言葉にすると立派に聞こえるけど、実際はおっぱいを触らせてあそこを触らせて、ペニスをしごいたりしゃぶったりするだけなのに。大体、ムラムラした人がみんな性犯罪に走るわけでもない。
でも、お客さんは、声に力を入れる。
「僕が言いたいのはね、自信を持ってほしいってこと。こんな仕事だって思ってるのかもだけど、仕事ってどんなものでも、必ず誰かの役に立ってるはずなんだ。頑張って仕事してる人は、やってることがどんなことであっても、尊敬されるべきだと思う」
「……」
「少なくとも僕は、まゆみちやんのこと、立派だって思ってるよ」
「ありがとう、ございます……」
言われたこと全部を丸呑みしたわけじゃないけれど、少しだけ気が楽になった。
たしかに、中には誇りを持って、頑張って仕事をしている人もこの業界にいる。人から後ろ指を指されるようなことでも、自分はそれでいいんだって、自分はこの仕事が好きなんだって、胸を張って生きてる人たち。
そういう人はきっと風俗嬢じゃない女の子の目から見たって、格好よく映る。
そんなふうになれるほど、あたしはまだ大きくない。でも、自分がやってることが決して無意味じゃない。これからはそれを信じていけると思った。
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