フェイク・ラブ 〜Aimi〜<第3話>
<第3話>
次の出勤日程の確認をして電話を切ると、思わず小さなため息が漏れた。
それが聞こえていたのかいないのか、冨永さんはどちらかといえば早口な店長とは正反対のゆったりしたトーンで話しかけてくる。
「るいさんは自宅送りでいいんですよね」
「はい、でもすぐ前だとまずいので……。下ろしてほしい場所の近くまで来たら言います」
了解でーす、と眠たげな声が返ってくる。
最初、顔といい、声といい、いつ会っても眠そうなので、こんな眠そうな人に運転任せていていいのかと、本気で交通事故を危ぶんだけれど、すぐにそういう顔と声なんだとわかった。
デリヘルのドライバーにも本当にいろいろいる。
いかにも裏社会の男って感じの人、昼間は普通に働いてるけど夜ここでバイトしてますって感じの普通っぽい人、よくしゃべる人全然しゃべらない人、etc.。
富永さんはというと、いつだってぼーっとしていて、でも、たぶんほんとはただぼーっとしてるんじゃなくて、あの眠そうな目の奥では、あれやこれや考えていそう。
何を考えてるのか、まったく読めないけれど。財布を持ってないのか、お札やカードを輪ゴムで束ねてポケットに入れてるし、見た目にまったく気を遣わないのか、いつも同じパーカーを着ていて、それがまたボロ雑巾を煮しめたみたいな色で、いつから洗ってないのか考えると恐ろしいし、とにかくありとあらゆる点がアヤしい。
どんな人生を生きてきて、どんな生活をしていて何を考えているのか、全然想像つかない。
ストーカーとか痴漢とか変な犯罪を犯すのってこういうタイプじゃないんだろうか。
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