フェイク・ラブ 〜Aimi〜<第6話>
<第6話>
非定型うつというものがあるらしい。
仕事とか嫌なことをしている時はうつ状態だけど、遊びの時間になった途端元気になる。
普通のうつの人は、うつと診断されてもすぐには認めたがらないけれど、非定型うつの人は自分がうつだと知った途端ホッとして、何かにつけ「うつだから」と病気に甘えようとするのだとか。
聡は、病院から抗うつ剤と睡眠導入剤をもらって飲んでいるけれど、私は普通のうつじゃなくて、まさしくこの非定型うつだと思っている。
仕事を辞めた後、再就職活動が上手くいかず、やがて眠れないと言い出して、二週間に一度の通院以外は家に引きこもるようになった聡は、家事すらろくに手伝わずオンラインゲームばっかりだ。
非定型うつ。要は甘えてばかりで何も出来ないってこと。
「できたよ」
15分かけて用意したのは、ごく簡単なものだ。残り物の少し黄ばんだご飯とインスタントみそ汁、昨日のお昼に作ったホイコーローの余ったやつ。卵焼きだけはその場で手作りして、あとは葱を添えた納豆。
聡は、声をかけてもきりが悪いからと、5分はパソコンの前から離れない。
ご飯ぐらい、テーブルで顔を突き合わせて一緒に食べだしたいけれど、待っていても冷めるだけなので、先に食べ始める。
卵焼きが残り少なくなりかけた頃、やっと聡が目の前に座った。味噌汁のお椀を手に取るなり、思いっきりしかめっ面になる。
「うわ、この味噌汁激マズ」
「所詮インスタントだし、冷めてるんだからしょうがないでしょ」
「あっためてきてよ」
「聡がいつまでもゲームしてて、すぐ食べないから悪いんじゃん」
自分でやれば、と続けようとしたけれど、聡の唇がへの字になりかけている。ここで不貞腐れさせても、この後の話し合いがスムーズにいかなくなる。
さっき、ご飯作るねって言った時決意したんだ。
今日こそはちゃんと聡と話し合うって。
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