フェイク・ラブ 〜Aimi〜<第12話>
<第12話>
短大進学のために東京に出てきて、聡に出会って聡と付き合って、変わったはずだった。
こんな私でも好きになってもらえたのが嬉しくて、ブスな私と並んだ聡が恥ずかしい思いをしなくて済むよう、今までこんなことやっても無駄だと思い込んでいたおしゃれや化粧も頑張り始めたし、7kgのダイエットにも成功した。
私たちは、学生時代の頃は、互いのアパートを行き来して、ほとんど毎日どちらかの部屋に泊まって、就職すると同時に部屋を借りた。表札に2人分の苗字を書き込み、私の名字を指さして、「いずれこっちは消さないとな」と言った聡の笑顔を今でも覚えている。
あの頃は、幸せしか信じていなかったのに……。
就職してまもなく、聡は会社の愚痴ばかり言うようになった。
サービス残業が多すぎる、休日出勤を強制される、上司に厳しく当たられる、そもそも自分に営業職は向いていないんだ……。
誰だってみんな最初は上手くいかないんだよ、聡だけが辛いんじゃないんだからと励ましたつもりだけど、そう言うと、藍美は俺の気持ちをわかってくれないと喧嘩になり、やがて聡はゲームの世界に逃げ込む。
一緒に暮らし始めて、かえって会話は減った。
会社への不満を加速度的に膨らませる聡は、私じゃなくてゲームに癒しを求めた。
私だって就職1年目で、それなりに嫌なことも大変なこともあって、それでも立派な社会人になるんだと頑張っていたのに、聡にもそうしてほしかったのに……。
ついに聡は私に相談もなく辞表を出した。
大喧嘩になって、私は泣きながらお揃いのペアカップをフローリングに叩きつけ、聡は罵声を罵声で返して家を出ていった。
半日して戻ってきた聡は、私に声をかけることもなく、パソコンの前に座りゲームをやりだした。
それでも、しばらくは聡にも一応やる気があった。
今度こそ絶対いい会社に就職するんだと面接を受けまくり、すべてに落ちた。
社会人1年目で前の会社を辞めたことは、人物査定の大きなマイナスになるし、聡にはそのマイナスをプラスに覆すほどの力はない。人当たりはいいけれど自分をアピールする能力に決定的に欠けていた。
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