【連載小説】Rizu〜風俗嬢の恋〜<第4話>
<第4話>
「りさ」はこのお店でのあたしの名前。いわゆる源氏名。
本名が理寿だからひとつもじっただけ。
別に「りか」でも「りな」でも「りえ」でも「まき」でも「なつみ」でもなんでもよかった。
違う名前でセックスすることに、あたしは既に慣れすぎていた。
「わかる?ちょっとメイク、違くしてみた」
「お化粧なんかしなくったって、十分可愛いのに。
りさちゃんくらいだったら、化粧なんてしないほうが絶対可愛いんだよ」
なんて、生徒指導の先生みたいな的外れなことを言って
(化粧しないほうが可愛い女の子なんているわけないのに、余程メイクが下手な子は別だけど)、
皺の寄った唇をこめかみに押し当ててきた。
四十を少し過ぎたと思われるこの小太りのおじさんには、
奥さんと幼稚園と小学生の子どもがいる。
初めてあたしがついた日、子どもの写メを見せてくれたけれど、
目のくりくりした男の子と女の子が、仲良く顔を寄せ合って写ってた。
きっと家の中ではいいお父さんで、
奥さんもあの子たちも、影でこんなことをしてるなんて、
まさかセーラー服姿の十八の女の子の身体をまさぐってるなんて、想像もしないんだろう。
やがて分厚い手がセーラー服のファスナーをおろし、ノーブラの胸をもみしだく。
やっとAカップしかない胸、浅いくびれに男の子みたいなぺたんこのお尻。
横から見るとやたら平べったい身体は女の魅力なんて欠片もないのに、
なぜかお客さんたちにとても好評だ。
いつのまにか上半身裸にされ、栗色の乳首をちゅうちゅう吸われながら、
指があそこを出たり入ったりしていた。
ちっともトキメキなんてない代わりに、嫌だとも思わない。
あたしの奥はしっとり火照って濡れて、
唇の隙間から漏れる声は店内を駆け巡る大音量のトランスにかき消される。
やっぱり自分はまともじゃないんだろう。
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