フェイク・ラブ 〜Aimi〜<第26話>

2014-04-02 20:00 配信 / 閲覧回数 : 1,060 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Aimi フェイク・ラブ 連載小説


 

JESSIE

 

<第26話>

 

どすどす歩み寄り、頭からヘッドセットを鷲掴みにして放り投げると、伸ばしっぱなしの髪がヘッドセットに絡みついて、「痛ッ」と悲鳴が上がる。

 

「痛いじゃないよっ、私のほうがどれだけ痛いか、苦しいか、想像できる!? 毎晩毎晩、好きでもない気持ち悪い男にキスされて、あちこち触られて、ビンタされたり、鞭で叩かれたり。今日なんて、お尻の穴、ヤラれたんだからっっ」

 

途中から涙が溢れてきて、声が掠れた。

 

視界に涙の膜がかかって、聡の顔が歪む。聡が急に遠くなる。

 

唖然とした声。

 

「鞭? お尻? なんだよ、お前、普通のデリヘルじゃねーの? SMやってたの?」

 

「違うっ!! 普通のデリヘルでも、そんぐらい過激なサービスするの、本番も道具も当たり前で、人によっちゃ殴ってきたりするし、ローソク垂らされたこともあるし」

 

マジかよ、とまた呆けた声。

 

むなしさで喉の奥が熱くなる。

 

なんで私はこんなことをわざわざ聡に説明してるんだろう。お店のことなんてどうでもいい、今ほんとに伝えたいことは別にあって……。

 

「いつから気づいてたのよ!!」

 

「いつだろ? 結構前だよ。藍美のドレッサーの前で、そういう仕事を探す本、見つけてさ。ページが折ってあったから、あーそっち系の仕事してんだなって。それに最近の藍美いつも化粧とか服とかバッチリで、工場の深夜バイトなのに、そんな格好で出かけてくのおかしいなって……」

 

「わかってて、黙って送り出したのは、しょーがないから!? 聡にとって、私が他の男にキスされたり、あちこち触られたり、ヤラれたり、もっとひどいことされるのは、しょーがないで済ませられることだってわけ!?」

 

沈黙は肯定と同じ。

 

叱られた子どもの顔で、唇を噛んで、今にも泣き出しそうにフローリングを見ている聡を目の前にしたら、悲しいよりもムカつくよりも、やりきれなさで胸がはちきれそうだった。

 

こんな男のために、こんな男のために、こんな男のために、私は私は私は……。

 

 

 

 




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