フェイク・ラブ 第二章〜Nanako〜<第1話>
<第1回目>
女が嫌いだ。
くだらないことで騒ぐし、三人集まりゃギャーギャーうるさいし、「あたしはあなたの大親友」って顔をしたかと思えばすぐ裏切るし、人の噂話が大好物。
きれいかブスか、細いかデブか、若いかおばさんか。見た目は少しずつ違っても、頭の中身はそうそう変わらない。たいがいはファッションと美容と噂話と芸能人のことで占められていて、要は何も入ってないのと一緒。そんな人間と話してたってつまらない。
女友だちはかけがえのないもの、彼氏より大事にしなければ、なんてぬけぬけという子が時々いるけれど、所詮友だちなんて自分のために何もしてくれないじゃないの。
男は上手いこと愛を人質にとれば、たいていの望みは叶えてくれる。
おいしいものを食べさせてくれるのも、一個うん十万円のバッグやアクセサリーや時計をぽんっとプレゼントしてくれるのも、みんな男。女は絶対にそんなことはしない。
女友だちとの付き合いなんて、あたしになんのメリットももたらさない。
「嫌なのよ、こうやって同じことを、何度も何度もくどくど言うの。言われるあなただって嫌でしょう?」
ここでは嫌ですと正直に言ったら、反抗的だと取られること必至なので、精いっぱい申し訳ない顔を作って小声ですみません、と呟く。
キリキリしたオーラととがった声をオフィスじゅうにまき散らす木崎が、はあっ、と露骨なため息をついた。
いろんな視線が四方八方から降ってくる。
おろおろしてるおじさん社員の視線。若い男性社員たちのあたしを心配している視線。ストレートに態度には出さないものの、確実にあたしを嫌っている同期の女性社員の視線は愉快そう。
「あなた、うち入って何年目?」
「五年目です」
「とっくに学生じゃないじゃない。未だに学生気分で、遊びの延長で会社に来てもらっちゃ困るのよ。仕事が出来るとか出来ないとかは、スキルの問題だけど、遅刻しないでちゃんと会社に来るっていうのは意識の問題でしょう。あなたには社会人にとって最低限の意識が欠けてるの、わかる?」
何を言われても「すいません」としおらしく頷くあたし。
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