フェイク・ラブ 第三章〜chiyuki〜<第4話>
<第4回目>
バスルームで立ったまま1度、それからベッドに場所を移してもう1度。立て続けに2回繋がった。
その後、火照った裸体を寄り添わせながら、長谷部くんに髪を撫でててもらっていた。
優しい指遣いに、まるで長谷部くんの彼女になったみたいと錯覚しそうになる。
「うち、よく使うんですか」
「よくっていうか、うーん、時々?」
「今まで誰、つきました?」
これは基本的に聞かないようにしているけれど、今だけはどうしても外せない質問だった。聞いたら嫉妬を抑えられないってわかってるのに。
「えとね、覚えてるのだと……。あぁ、レナちゃん。あの子はあんまよくないね」
「嘘。レナさん、ナンバーワンですよ」
「知ってる。でも俺、ああいう子苦手でさ。キレイ過ぎるんだよ。自分で自分を可愛いって思ってるタイプは無理」
「……なんか、意外です。長谷部さんは、そういうタイプが好きそうに見えました」
変な言い方になっちゃったかな、と後悔して口をつぐむ。
わたしの知っている長谷部くんは、男子からは憧れられ女子からは羨望の眼差しを向けられるような、わかりやすい美人が好きだったはずで、そのことを言いたいだけだったんだけど。
長谷部くんはわたしの内心には当然気づかず、うーん、と少し考え込んだ。
「昔はそうだったかもね。高校の時なんて、学校で1番可愛い子と付き合ってたし」
忘れかけていた加恋ちゃんの顔が瞼の裏に浮かぶ。
いつも長谷部くんの隣で誰よりも幸せそうに笑ってたあの子。黒いブレザーに模様も何も入ってない黒のスカート、リボンはなし。校則通りに着たら喪服かリクルートスーツにしか見えない制服も、アイドルの衣装みたいに可愛く着こなしてたっけ。
長谷部くんも加恋ちゃんのことを思い出してたのかもしれない、遠くを見るように天井を見つめて笑いながら、手は相変わらずわたしの髪を撫でていた。
「でもねー、それは若い時の話。いろいろ経験してわかったよ、女の子は顔じゃないって。特に自分が可愛いって知ってる子は疲れる」
「疲れますか」
「今は自分に自信がある子より、ない子のほうに惹かれるかな」
「わたし、自分に自信、ないですよ」
「なんとなくわかる。つまり美樹ちゃんは、俺の好み」
そんなことを言われて唇にチュッと音を立ててキスされて、ときめきが体じゅうにじんわり広がっていく。
その言葉が風俗嬢に向けられているものだということに絶望しながら。
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