フェイク・ラブ 第三章〜chiyuki〜<第11話>
<第10回目>
でも、誰とでも仲のいい長谷部くんは、他の人としゃべる時とまったく同じノリでわたしに話しかけただけで、お化け屋敷での会話にも特別な意味なんて全然なかったんだ。
わたしが長谷部くんを自分には関係のない人と思っていたように、長谷部くんもわたしを自分に釣り合う相手だとは思ってな
くて、二人の間に恋愛は成立しようがなかった。
もちろん努力はした。
少しでも長谷部くんに注目してほしくて、好きになってもらいたくて、髪型を変えたりスカート丈を短くしたり、その頃はまだあまりしてなかった化粧だって頑張った。
だから、「柿本さん、ちょっと雰囲気変わったー?」って言ってもらえた時は、足もとからふわふわ浮きあがりそうなほど嬉しかった。
けれど、いくら足を見せようがマスカラを塗りたくろうが、所詮わたしは地味な女の子。
一度地味な子だと認識されてしまえば、イメージは後から修正できない。お互い関係ないもの同士だったわたしと長谷部くんは、文化祭の後から顔を合わせればちょっとした会話ぐらいはするようになったけれど、二年生になってクラスが分かれてからは、それもなくなった。
——もし来年も同じクラスになったら……。来年もお化け屋敷をやろうよ。リベンジするために……。
その約束は、そもそも前提からなくなった。
廊下ですれ違っても、長谷部くんはわたしを無視し――というよりも、無視するも何もそもそも眼中に入ってないんだけれど――わたしは長谷部くんの背中を切ない気持ちで振り返った。
会えなくなって、口をきけなくなって、可能性が薄くなればなるほど切なさを栄養に恋心は膨らんでいく。
そのうち長谷部くんは加恋ちゃんと付き合い始め、わたしは伝えることもできないまま失恋した。
だけど、失恋しても、片思いは終われない。
人気記事
JESSIEの最新NEWSはFacebookページが便利です。JESSIEのFacebookページでは、最新記事やイベントのお知らせなど、JESSIEをもっと楽しめる情報を毎日配信しています。