フェイク・ラブ 第四章〜Iori〜<第25話>
<25回目>
「おはよう。あれー、今日遅いね? 終電で来たの?」
「いえ、今日はちょっとこのへんで友だちと飲んでたんですー。0時30分、出勤」
「てことは、お酒、入ってるんだ?」
「入ってますよー、バリバリですよー。もう、飲まなきゃやってらんないっ!」
その言葉は本来そんなに明るく言うものじゃないんじゃ、ってツッコミたくなるくらいテンション高い。お酒が入るといつにも増してテンション上がるタイプなのかも?
「ねぇねぇ、晶子さんってドリームガール、長いんですかぁー?」
待機場所目指し走り出したワゴンの中、無邪気に話しかけてくる。
この子、あたしだけじゃなくて誰に対してもこうなのかな。ウザがられて嫌われないといいけれど。若いし、業界慣れしてないんだろうし、心配になる。あたしが心配したってどうにもならないんだろうが。
「うーん。もうすぐ3年」
「ながっ! たしかにここ、いやすいと思いますー。バックそこそこで、その割にプレイ内容ソフトだし」
「ソフト、かな」
「ソフトですよー。あたし、最初のお客さんにワセリン出したらドン引かれましたもん!」
「は?」
何がおかしいのか、顔をハテナマークにしたあたしを見て、大げさにきゃらきゃら笑う。箸が転がってもおかしい年頃、ってやつか? あたしがハタチの時は違ったと思うけど。
「前の店はAFってあったら、ほんとにアナルやっちゃう店だったんですー。こっちは本番の隠語でしょ?」
「へー、そんな店もあるんだ……。知らなかった」
「あるんですよーぉ。あたしも逆に、えっドリームガールソフトじゃん、ってびっくりしたもん!! かえって本番のほうがソフトですよねー」
なんて、しばらくアナルがどうこうというトークになり、別に聞きたくもない話に、へぇへぇと相槌を打ち続けた。
にしてもハタチにして、お金のためにお尻の穴を差し出す、そんなことを日常にしているなんて。
いや、あたしだって無料オプションで即尺にアナル舐め、道具系もバイブレーターとか細めのバイブとか、軽いものならOKにしてるし、あんまりひとのことは言えないんだけど。
風俗なんて遠い世界だという一般の女の子からしたら、本デリで働いてるってだけで、見知らぬ男の洗ってないモノを口に含むってだけで、異常なんだ。
とはいえやっぱり、こんな若くて無邪気な子が、って思ってしまう。屈託のないキャラクターがいたたまれない気持ちを増幅させるのかもしれない。
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