フェイク・ラブ 第四章〜Iori〜<第38話>
<37回目>
「あぁだめ、もう我慢できない、ここで挿れていい?」
「だぁめ、つけてからじゃなきゃ……」
「HPには君、生OKって書いてあったよ」
「それはフェラだけ。本番はゴムつきでお願いしてるの、我慢して……」
何が野々花のためだ、何が健気な母親だ。
色目を使い、艶やかな声音を使って、全身で媚びを売ってATMよろしく男から金を引き出してるだけじゃないか!! こんな仕事に誇りもクソもない。本デリなんて言葉を濁してるだけで、実際はただの売春なんだから。
……ダメだ、今日はどうしても気持ちが荒む。生AFはNGにしてるくせに、ソープをたっぷり塗り付けた素股でにゅるにゅるし合ってるうちに、いつのまにか受け入れてしまってるし。
妊娠はピルを飲んでるから大丈夫。怖いのは病気だ。でもコンジロームで真っ赤なカリフラワーみたいなあそこになろうが、ヘルペスで目が腫れ上がろうが、エイズになって一巻の終わりを迎えようが、もうどうでもいい気がした。
いつもよりも大袈裟な声で喘いで雑念を吹き飛ばす。
近所に響くからと、バックのまま後ろから口を塞がれ、SMっぽいシチュエーションに興奮したのかお客さんの動きがにわかに激しくなる。
イけ、イけ、早くイッてしまえ。さっさと出すもの出して早くここから出て行ってくれ。
必死に念じながら、泣き出しそうになっていた。
野々花ごめん。こんな母親で。こんなことを毎日繰り返してしまうあたしで。
早漏のお蔭で浴室内での行為は思いのほか早く終わり、その後は改めてシャワーを浴びて服を着て、リビングで淹れてもらったコーヒーを飲みつつしゃべってただけ。
『俺、一回イッちゃうもうダメなんだよねー。この歳になるとさぁ』って苦笑いするお客さん。あたしのことはまずまず気に入ってくれたみたいだし、全体的には楽な仕事だった。
タイマーの電子音が時間を告げ、肩の荷が下りるような安堵と共に立ち上がる。
「じゃあ、時間来たので。今日はどうも、ありがとうございました」
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