フェイク・ラブ 最終章〜Rin〜<第9話>
<第9回目>
あたしとあたしの母親は15才の歳の差しかない。
つまり14才で妊娠して、15才で産んだことになる。けれども、父親はおろか、おじいちゃんとかおばあちゃんとか、その他の親戚の類にすら一度も会ったことがないし、母親から直接聞いてもいないので、あたしの誕生にどんなドラマがまつわっているのかは不明だ。
どうせ22時台のテレビドラマみたいな陳腐な話だろうから、興味もないけど。
母親が何の仕事をしていたのかは知らない。
いつも濃い化粧に赤だのピンクだの派手な服で、トイレの消臭剤を何種類か混ぜたような安っぽい香水をぷんぷんさせていたから、水商売か風俗か愛人業、そのうちのどれか、またはいくつかだと思う。
母親は物心つくかつかないかのあたしがいる家に、平気で自分の男を連れ込んでいた。
スーパーのちらしの裏に絵を描いて遊んでいると、壁の向こうで喘ぎ声がするなんてのは毎日のことで、夜中にトイレに起きたらキッチンの流し台で立ったまま絡み合っている2人をばっちり目撃してしまったこともある。
母親もその男もごまかしたり隠したりしないで、アハハこいつビビってるよー、って震えてるあたしを指差し笑ってた。
学校には行かせてくれたけど、給食費は常時滞納。運動会にも、授業参観にも、一度だって来てくれたことはなく、お金を出してもらえなかったせいで、遠足も修学旅行も行ったことがない。
ただ、教科書以外の学用品がろくに揃わないのには困った。算数の授業で分度器やコンパスを使うからと言っても、そんなの友だちから借りればいいだろーと買ってくれないし、新学期に学校に持っていかなきゃいけない雑巾だって、あたしだけ提出できない。
自分の服はクリーニングに出しても、あたしの服は洗濯してくれないから、洗濯機の使い方を覚えるまで、ぷんぷん臭う服を着て小学校に行ってた。
だから、学校でついたあだ名は“こじき”。ずっと、いじめの標的だった。
掃除の時間に水をかけられる、机の中にゴキブリの死骸を入れられる、学校の裏庭で焼却炉に閉じ込められるetc。
思いつく限りのほとんどのいじめを経験してきた。
先生は万年忘れ物No,1のあたしを叱りはしても、いじめから守ってくれようとはしなかった。
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