ブーティー・ギャング・ストリッパーズ<第29話>
<第29話>
由井は小さなデザイン会社の管理職だということだったが、どう見てもてまりとは釣り合わなかった。
てまりは顔もかわいらしいし、体も細いが鍛えられているし、若いし愛嬌もある。それに対して由井はぱっと見る限り、人を惹きつける要素が何もない。容姿から察するに金も持っていなさそうだ。
それでも柊太郎は、由井が話す姿を眺めていると、てまりが好意を抱く理由が何となくわかった。
気が弱そうではあるが、それが悪い方向に作用せずに、何でも拒絶せずに受け入れてくれるような不思議な包容力になっている。他人に害意をまったく感じさせない佇まいも、父親に傷つけられ続けたてまりには安心できるものだったのだろう。
「そうか、柊太郎くんていうのか。てまりとこれからも仲良くしてくれよ」
穏やかな微笑みとともに出された手を取り、握り返す。
てまりは隣の席で、由井のもう片方の腕に子猿のようにしがみついていた。店でそんなことをしたら、本来なら厳しく注意される。スタッフと客との間に「そういう」関係があると外部に知られるのは本当は御法度なのだ。だが、和泉はもはや諦めているようだとてまりは以前言っていた。
「あるいは……僕みたいな若くてかわいい子がお客さんとラブラブだったら、他のお客さんも『ひょっとしたら自分にもチャンスが』って色気を出すかもしれないから、客寄せとして考えているのかも」とも。
そのときは「誰が若くてかわいいってぇ?」と小突いて終わったが、改めて二人を見ていると、それもあり得ると思った。
てまりは由井といる限り、おそらくまっとうな人生を歩むことができるだろう。男に裸を見せつけながら踊るこの仕事の何がまっとうかという奴もいるだろうが、まっとうとは表面的な在り方だけを示すものではない。
よかった。この人ならてまりをまかせられる。いい気なもので、柊太郎はてまりの保護者のようになったように感じた。てまりは人の保護欲を掻きたてるものを持っているのだから仕方がない。ある程度長く一緒にいると、特に強くそれを感じるようになる。由井ももしかしたらそこに「やられた」のかもしれない。
その夜、てまりは帰ってこなかった。
明け方になって晴れ晴れとした、だがどこか疲れたような、寂しげな顔で戻ってきたが、柊太郎は寝たふりをしていた。
てまりはシャワーは浴びずに、柊太郎の布団の隣に布団を敷いて、柊太郎に背を向けて眠ってしまった。
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