泡のように消えていく… 第一章〜Chii〜<第2話>
<第2話>
そう、なんの変哲もない2980円のブルージーンズ! 足もとだっていつものハイカットのスニーカー。
一応面接だからきちんと見えるようにジャケットを羽織ってきたけれど、中身は中学生が着るようなロゴ入りの長袖Tシャツだ。
駅前広場で迎えの車を待っている間、それっぽい車から降りてくるそれっぽい女の子を何人か見て、自分の格好がひどく間違っていることに気がついた。
オンナの魅力で勝負する風俗という世界、面接だからってジーンズにスニーカーなんて、ありえないんだ。
スカートは似合わないから履かないし、ワンピースは夏物しか持ってないから、他に選択肢がなかったんだけど。
「バイトはしたことある?」
「はい。ファミレスと、あと短期なんですけれど、郵便局で年賀状の仕分けを、去年の年末に」
「それだけ? 風俗の経験は、ない?」
「はい」
「それでいきなり、ソープへ?」
朝倉さんの鋭い目が怪訝そうにわたしを見て、汗で湿った首の根もとがすぱんと切れるかと思った。
「えっと、あの、一人暮らしが、したくて。お金が必要なんです」
「今は実家?」
「はい」
「ふーん」
意味ありげなふーん、そして意味ありげな沈黙。
静か過ぎて昔のポップスがよりくっきり聞こえる。
もうダメだ、絶対不採用だ。ううん、そもそもこんな色気もそっけもない格好で――ちゃんとお化粧して、それなりの格好をしたところで色気の欠片もないんだけど――面接に来ておいて、話を聞いてもらえるだけでもありがたいことなんだ。
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